ガンバ大阪が秘策で横浜F・マリノス撃破!
次々と切られる交代のカードを介して、ガンバ大阪を率いて3シーズン目に臨んでいた宮本恒靖監督は、敵地・日産スタジアムのピッチへメッセージを送り続けた。 「バランスを崩したくない部分もありましたけど、今日の大きなテーマは『攻める』だったので」 昨シーズンの覇者、横浜F・マリノスと対峙した23日の明治安田生命J1リーグ開幕戦。前半34分までに2点のリードを奪うも、後半に入ってからはマリノスがかけてくるプレッシャーがどんどん強まってくる。そして、追撃のゴールを決められた後半29分を境に宮本監督が動いた。 直後の30分、37分、そして45分と選手交代を告げる。ベンチへ下げられたのは、ともに1ゴール1アシストを決めていたMF矢島慎也とMF倉田秋。そして、最後は1トップの宇佐美貴史。しかし、ベンチ入りしていたただ一人のディフェンダー、新里亮がピッチに立つことはなかった。 矢島とFWアデミウソン。倉田とMF福田湧矢。そして、宇佐美とFW渡邉千真。システムを変えて守備を固めるのではなく、心身ともにフレッシュなアタッカーたちを「3点目を狙う」というメッセージを込めて次々と投入。アグレッシブな采配で9年ぶりの開幕戦勝利をもぎ取った。 「昨シーズンの開幕戦でもマリノスに負けているので、まずは勝つことを目標に置いて、そこからの逆算でマリノスのいろいろな試合を見て、守備だけでなく攻撃でも対応策を練ってきました。具体的には言いづらい部分がありますが、そうしたものができた試合だったと思っています」 ホームでの対戦を残しているだけに、試合後の記者会見で指揮官は詳細を明かさない。しかし、開幕戦のピッチへ送り出された布陣には、先週の水曜日と木曜日は冒頭15分以降を、同じく金曜日と土曜日はすべて非公開で行った練習で熟成させてきた、マリノスへの対策が色濃く反映されていた。
7位に終わった昨シーズンの途中から3バックをメインとしてきた最終ラインを、再び4バックへ戻した。そして、マリノス戦でJ1出場を通算631試合として、名古屋グランパスなどで活躍した元日本代表GK楢崎正剛がもつJ1歴代最多記録に並んだ40歳のベテラン、遠藤保仁を「攻撃する時間を作ってほしい」というタスクとともにアンカーにすえた。 さらに遠藤と宇佐美の間に左から倉田、井手口陽介、矢島、小野瀬康介のMF陣を並べた[4-1-4-1]システムを、倉田は「マリノス対策です」と試合後に明かしてくれた。 「マリノスはボール回しが独特というか、サイドバックが中へ入ってきて攻撃してくる。なので、そのスペースを埋める狙いがありましたし、実際に上手く消せたかな、と思っています」 アンジェ・ポステコグルー監督が就任した2018シーズンから、マリノスは[4-3-3]システムのもとで独特の攻撃的スタイルを標榜してきた。3トップの両翼、マリノス戦で言えば左の遠藤渓太と右の仲川輝人がタッチライン際に大きく開き、左右のサイドバック、ティーラトンと松原健が中盤の中寄りにシフト。いわゆる「偽サイドバック」と化して、中盤で数的優位を作り出す。 昨夏以降は戦い方が研ぎ澄まされ、最終的にはリーグ最多の68ゴールをゲット。2人の得点王、仲川とマルコス・ジュニオールを同時に輩出して、優勝に花を添えたマリノスの脅威に対抗するために、センターバックの人数が3枚から2枚へと削られ、その分を中盤の厚みへと回した。 そして、宇佐美を一の矢として徹底したハイプレスを仕掛け、マリノスのビルドアップを寸断する。守るためではく、攻めに転じるためのプレスは開始6分、マリノスのGK朴一圭のトラップが大きくなった隙を突いた矢島のボール奪取と、矢島のパスを受けた倉田の先制ゴールを導いた。 「プレスのはめ方は狙い通りでした。上手く慎也が奪ってくれて、最高のパスを出してくれたので、僕はただ押し込むだけでした」 倉田が声を弾ませたが、対策はハイプレスだけではない。