「愛知にこどもホスピスを作りたい!」地元企業の心を動かした、親たちの願い
「パニックなんですよね。もう受け入れられないし。本当に、診断されたときから、変わるんです。家族のありようが全く」と、当時の心境を明かす安藤さん。 3度の入院に、人工透析。佐知ちゃんはもちろん、支え続ける家族の疲労も、蓄積されていった。
「薬をいくつか飲むんですけど、しんどくて飲めないときがあるんですね。佐知の気持ちじゃなくて、“飲ませないと”っていうので、『飲まないともっと悪くなるよ』とか心ない言葉を言ったこともあって」と話す安藤さん。さらに、必死に治療と向き合うあまり、まだ小学生だった佐知ちゃんの兄・まさきくんのケアも、十分にできなかったという。
「息子からすると、いきなりママはいないし、妹は入院になっちゃって。そういう気持ちを抱えながら生きていたことに、軽くしか気付けていなかったと思います」と闘病の日々を振り返った。
再発が分かったとき、佐知ちゃんがお母さんに宛てた手紙。 そこには、 “ママへ。いつもありがとう。いろんなことを毎日させて、ごめんね。前むきで明かるくて、おもしろいママ、大好きだよ” と書かれていた。 子どもながらに、佐知ちゃんも家族の異変に気付いていたのだろう。 2021年、佐知ちゃんは9歳6ヶ月で天国へ旅立った。闘病を振り返り、安藤さんは“ある出来事”が、現在の活動につながっているという。
安藤さんが見せてくれたのは、幼稚園の卒園式の映像。そこには、卒園式の会場に設置された画面を通して、先生から卒園証書を受け取る動きをする佐知ちゃんの様子が映っていた。式の当日、佐知ちゃんがいたのは病院。“どうしても出たい”という佐知ちゃんの願いを聞き、園が特別にリモートで卒園式に出席させてくれたのだ。
卒園式の経験から、“やりたいこと”を“できた”に変える経験の大きさを実感した安藤さん。「いま置かれている状況下で、最大限楽しめるようにできるといいですよね」と話す。 そんな安藤さんたちが目指すのが、佐知ちゃんのように“できないこと”が多い子どもたちの、“やりたい”をかなえる場所の設立。その場所こそが、『こどもホスピス』なのだ。