衛生悪化、下痢に苦しむロヒンギャ難民……日赤医師が語る難民キャンプの今
国際的な人権問題となっているミャンマーで起きたロヒンギャ難民。その隣国バングラデシュ難民キャンプで支援活動に従事していた日本赤十字社の医師による帰国報告が6月15日、都内の日本赤十字社本社で行われました。 前日14日に帰国したばかりの医師の小林謙一郎さん(36)から、雨季に入り、土砂災害や衛生環境の悪化などのリスクに直面している現地の状況などの話を伺いました。
衛生環境が悪化、急性の下痢症増加
普段は日本赤十字社和歌山医療センターで内科医として勤務する小林さん。公衆衛生の分野に関心があり、難民キャンプにおける感染症や下痢の対策に取り組みたいとの思いでロヒンギャ難民支援活動に参加。これまで現場で緊急医療支援や地域保健活動に長期にわたり携わってきました。 昨年8月25日にミャンマー・ラカイン州で発生したロヒンギャ武装勢力によるミャンマー警察や軍施設の襲撃事件をきっかけに、ミャンマー軍の掃討作戦によってバングラデシュへ避難してきたロヒンギャの人々は70万人に及び、それ以前に流入した人を合わせると約130万人もが今も難民キャンプの厳しい環境下での暮らしを余儀なくされています。
小林さんによると、現在難民キャンプで大きな問題となっているのが土砂災害や急性の下痢症の増加です。 バングラデシュでは6月から10月は本格的な雨季にあたり、雨量が格段に増します。難民キャンプが形成されているコックスバザール県の丘陵地帯はやわらかい土がむき出しになっており、雨水で容易にぬかるみが崩れるため土砂崩れが多発。約2100世帯、9000人以上で被害が確認されています。
大雨により至る所に設置された仮設トイレの水が溢れたり、土砂災害でトイレが127個倒壊し、生活用水や飲み水が汚染され、それが下痢症の増加を引き起こしているそうです。水回りの衛生環境が悪化することで、子ども達だけでなく大人や高齢者にも下痢症が広がっている状況だといいます。 難民キャンプでは大勢の人が密集していて、竹やビニールで作った仮設の家で暮らしているため、衛生環境が十分ではなく病気が多発、蔓延しやすい環境です。とりわけその土地自体も大雨で容易に土砂崩れを起こす災害に弱い地域です。そのため、患者の診察や治療のみならず、病気を予防するための公衆衛生に対する取り組みや災害対策が求められているといいます。