「事業者の撤退相次ぐ恐れも…」 急増する木質バイオマス発電所、燃料の未利用材は「取り合い」 チップ不足で計画通りに操業できない施設も
エプソンが長野県で進める木質バイオマス発電所計画
かつて長野県の飯田下伊那地域の可燃ごみを焼却処理した飯田市桐林の「桐林クリーンセンター」の跡地。ここに、セイコーエプソン(諏訪市)は同社初の木質バイオマス発電所を建設する計画を進めている。11月15日、旧センターの建物は解体に向けて足場やシートで覆われていた。 【グラフ】稼働する木質バイオマス発電所と、発電電力量に占める割合
再エネの「取り合い」激化や価格高騰を懸念
セイコーエプソンは2023年12月、国内外の全拠点の使用電力を再生可能エネルギー由来に切り替えた。屋根に太陽光発電パネルを設置した工場もあるが、再エネ電力は電力会社から買う割合が多い。この先も購入に頼り続けると、企業間の再エネの「取り合い」が激しくなり、価格が高騰する懸念もある。
重要な自社電源、26年度からの稼働目指す
計画中のバイオマス発電所は出力1990キロワットで、規模は小さい。だが、生産企画部の小須田直紀部長(54)は「わずかでも安定した再エネを持続的に調達しなければいけない状況にある」と、自社電源を持つ重要性を強調する。 バイオマス発電所の投資額は数十億円。枝葉などの未利用材や、社内で使った木製パレットをチップにしたもの、使用済みのキノコ培地を取り入れ、合わせて年約3万トンの燃料を確保できる予定だ。諏訪郡富士見町や松本市の事業所周辺などにある社有林も活用する。26年度の稼働を目指している。
全国で急増する木質バイオマス発電所
林野庁によると、木質バイオマス発電所は全国で急増している。固定価格買い取り制度(FIT)と、売電の際に国が一定の補助を上乗せする「FIP」のいずれかで国の認定を受け、稼働している木質バイオマス発電所は24年3月時点で全国244カ所。15年比で11倍に増えた。
高い買い取り価格 最も多い、未利用材使う発電所
中でも未利用材を使う発電所は、FITによる買い取り価格が高く設定されたこともあって最も数が多く、136に上る。県内には「信州F・パワープロジェクト」の発電所(塩尻市)など4カ所が稼働する。
取り合いで計画通りに操業できない施設も
発電所の増加は未利用材の取り合いを招き、チップ不足で計画通りに操業できない発電所が各地にある。FITかFIPの認定を受けたものの未稼働の発電所は、3月時点で全国に279ある。