「事業者の撤退相次ぐ恐れも…」 急増する木質バイオマス発電所、燃料の未利用材は「取り合い」 チップ不足で計画通りに操業できない施設も
不足の背景に国産材需要の減小
未利用材は、製材や合板など向けに木を伐採するのに伴って発生する。ただこうした木材(素材)生産の規模を示す全国の「素材生産量」は、23年に対前年比で減少した。21年に世界的な供給不足で木材が高騰する「ウッドショック」が起きたが、それも沈静化し、国産材需要が減ったことなどが背景にある。国内の住宅着工戸数は減少が見込まれ、それに伴い未利用材の発生も減る可能性がある。
厳しくなる経営環境、事業者の撤退相次ぐ恐れも
国は21年決定の中長期的なエネルギー政策指針「エネルギー基本計画」で、30年度の発電電力量に占めるバイオマス発電の割合を5%に高めるとした。輸入の木質ペレットやPKS(パーム椰子殻)を燃料に使う超大規模の木質バイオマス発電所もあり、22年度には3・7%まで拡大した。日本木質バイオマスエネルギー協会(東京)の沢田直美専務理事は、認定を受けたが稼働していない発電所が稼働すれば、目標の5%は超えるとする。
だが沢田氏によると、チップの価格に加えて維持管理費や人件費も高騰し、発電所の運営企業にとって状況は厳しくなっている。新規の発電事業者の参入が今後も続くかは見通しにくく、FITの買い取り期間(20年)の満了後、事業者の撤退が相次ぐ恐れもある。沢田氏は「事業者に続けてもらうにはどうしたらいいか、真剣に考える時期に来ている」と指摘している。