激動の女子フィギュア界がロシア4回転旋風で3極化へ
「4回転の技術点は圧倒的な武器です。しかも、このロシアコンビは、非常にむずかしいプログラムで、ジャンプとジャンプのつなぎ目などの細かい部分に工夫があります。ただフィギュア界の表現でいえば、スケーティングスキル、滑り自体の強さや質が弱く、まだジュニアの感覚が残っているように見えます。それでも技術点に引っ張られる形で演技構成点がこれだけ出てしまう現状に若干の疑問はあります。まだ完成度ではコストルナヤナらには及びません」と中庭氏。 (2)に分類されるのは、18年の平昌五輪で金メダルを獲得したロシアのアリーナ・ザギトワ(17)、銀メダルだったエフゲニア・メドベージェワ(20)らのグループ。ザキトワはSPでは2位の79.60だったが、フリーではジャンプの回転不足を取られ、125.63に終わり、計205.23で最下位に沈んだ。4回転はないが、3回転+3回転を軸に、演技の究極の完成形を目指す。演技構成点が突出するのが特徴で、日本勢の宮原知子(21、関大・木下グループ)や坂本花織(19、シスメックス)、今シーズンも表彰台に立てずに苦労している本田真凛(18、日本航空)らが、このグループに入るのかもしれない。完成度と表現力で演技をまとめていくパターン。GPシリーズではザギトワがフランス杯では3位、メドベもスケートカナダで3位に入った。 そして最後の(3)が、GPファイナルを自らの持つ世界最高スコアを更新して優勝したコストルナヤとフリーに4回転サルコーを入れながら転倒して4位に終わった紀平が所属する技術と完成度、表現力の3つが揃う総合型のグループ。コストルナヤは紀平にSPで優位に立たれないため、初めてSPにもトリプルアクセルを入れ、フリーではトリプルアクセルを2本組み込んで綺麗に着氷してノーミスで優勝をゲットした。 「4回転のないコストルナヤが勝ったことはフィギュア界の未来にとってポジティブな結果になったと思います。トリプルアクセルでの技術点だけでなく、要素1つ1つのGOE、演技構成点を含めたトータルで勝負して評価されました。紀平さんにも言えますが、ロシアの4回転を跳ぶ2人に比べて、コストルナヤと紀平の2人のスケーティングは滑るし、さらにトリプルアクセルをメインにした跳ぶ、表現するの3つが兼ね備わっています。プログラムの完成度、技術、表現力のトータルで評価される本来、フィギュアが目指すべきフィギュアをしています。ただ、北京五輪に向けて4回転、あるいはトリプルアクセルがなければ勝てない時代になったことは確かです」 コストルナヤ、紀平のグループを王道として中庭氏は評価している。 「紀平さんは失敗しましたが、4回転サルコーを冒頭に入れたのは未来へ向けて意義あるチャレンジだったのでしょう。練習を積んできたことを証明しました。4回転の転倒以外は、ミスがなかった。新しい流れの中で戦える選手。ロシアの3人に対抗できます」 シーズンは終盤に入り国内では19日から国立代々木競技場 第一体育館で全日本選手権が行われ、来年3月には世界選手権(カナダ・モントリオール)が残されている。女子フィギュア界の3極化の流れは、今後、どう展開していくのだろうか。