いま世界で何が起きているのか。【世界報道写真展】が日本で復活開催
今回の写真展には、京都で毎年国際写真祭を行っているKYOTOGRAPHIE(キョウトグラフィー)が特別協力として参加する。オープンフォーマット部門のアジア地域優勝者である松村さんのプロジェクト「心の糸」は、2023年春のKYOTOGRAPHIEで展示された経緯があり、その縁もあって実現した。 「展示空間の設計や設営、キャプションの翻訳などをKG(KYOTOGRAPHIE)チームの方々に担っていただきました。来場者に強く訴えかける展示空間を制作する上で、テーマに沿った解釈で展示設計をご提示くださるKGチームのお力を借りられたことは、たいへん大きなことでした」 ◆強い写真が心を開き、対話の場をつくる 日本開催を成功させるためには、資金確保という課題もある。会場の印刷工場跡はギャラリーではないため入場料を設けることができない上に、プリントの輸送や会場制作に多額の費用が必要だ。公共性の高い情報を伝えることへの社会的な理解を求めて、クラウドファンディングも実施している。 なぜ今、私たちは世界の出来事を知る必要があるのか。日本開催に合わせて来日する世界報道写真財団エグゼクティブ・ディレクターのジュマナ・エル・ゼイン・クーリーさんは、こう述べる。 「世界はこれまでにも増して危険な時代になっていると感じています。エスカレートする戦争、長引く紛争、深刻化する気候変動問題、原因はそれだけではありません。固定観念に支配され、他者を理解しようとしないことがもたらす新たな硬直。私たちが生きる世界はいま、対話の著しい欠如に陥っています。そんな時代だからこそ、フォトジャーナリズムが担う役割は重要性を増しています。 世界報道写真展では、強い写真が閉ざされた心を開くことを、物語には普遍性があることを伝えようとしています。私たちは、普遍性こそがつながりを生むと信じています。世界の危機的状況に対して具体的な解決策を提示することはできませんが、対話なくして解決策はありません。その対話の場をつくることが、私たちの使命なのです」 写真は社会を映す鏡だ。現実を記録するだけにとどまらず、ときには目に見えないものを捉えることもできる。平和とは、正義とは、人権とは。たった1枚の写真が、見た人に強く訴えかけることもある。大陸や国、言語が違っても、たとえそれが「遠い国の出来事」であったとしても、たった1枚の写真を通じて私たちは同じ思いを抱き、同じ願いをもち、つながることができる。2024年の締めくくりに、この世界で起きていることを伝える作品と向き合ってみてはどうだろう。知るための扉は今、開かれているのだから。 【世界報道写真展2024京都】 ・会期 2024年11月30日(土)~12月29日(日) ・休館日 12月15日(日) ・開館時間 午前10時~午後6時 ・会場 京都新聞ビル地下1階印刷工場跡(京都市中京区烏丸通夷川上ル) ・入場料 無料 text: Eimi Hayashi