いま世界で何が起きているのか。【世界報道写真展】が日本で復活開催
◆世界と日本をつなぐ、新聞インスタレーション 京都新聞主催のもと、3年ぶりの日本開催となる「世界報道写真展2024京都」では、32の受賞作品が一堂に会する。会場は、京都新聞ビル地下1階にある印刷工場跡。かつて国内外のニュースを毎日印刷していた場所で、世界の報道写真を展示する。 国際情勢への関心が薄いといわれる日本人に向けて、世界の報道写真をどのように自分ごととして捉えてもらうのか。世界の出来事と日本の来場者をつなぐ橋渡しとして着目したのが、自社のリソースでもある新聞記事だったと松村さんは言う。 「世界の報道写真というと、どうしても“外国の遠い出来事”になりやすい。では、ワールド プレス フォトの受賞作品のトピックは、実際に日本でどのように報じられているのか。そんなシンプルな興味から、京都新聞のデータベースを使ったリサーチを始めました。 2020年1月1日から2024年10月31日までの期間、各受賞作品にまつわるトピックのキーワードから関連記事を検索すると、ウクライナ侵攻では数千件ヒットしましたが、アフリカの内戦の記事は数十件程度。モーリタニアからヨーロッパを目指した移民船が中南米に漂流しているというショッキングなニュースは『該当データなし』と表示されました。北中米に関しては、アメリカ以外の報道が少なかったです」 「一方、シングル部門のヨーロッパ地域の優勝者に選ばれたのは、2023年のトルコ・シリア大地震の惨状を撮影したアデム・アルタンさんの写真だったのですが、京都と滋賀のニュースを発信する京都新聞では地震のことを報じつつ、募金活動が滋賀県守山市で行われたことを伝えていました。日本の国際報道に偏りがあるのは明らかですが、受賞作品とあわせて関連記事を紹介することで、世界と日本のつながりを示すことができると考えました」 松村さんは、各受賞作品のテーマに関連する記事が載った新聞のインスタレーションを制作した。紙面は実際に新聞を印刷する輪転機でロール紙に刷り出され、工場稼働期にロール紙があった場所に展示される。 一部、紙面が印刷されていない白紙の箇所もあるが、これはデータベース上に該当する記事がなかったことを表している。「関連記事の大きさや掲載位置、受賞作品と記事の内容の差異にもぜひご注目ください。日本と世界の関係性を浮き彫りにしています」と松村さん。