「読書はセクシー!?」イギリス人が日本文学にハマる理由と“正義”のありか【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
イギリスで今、日本文学が人気を集めている。去年、イギリスで売れた翻訳小説の4分の1は日本のもの。何がそんなにイギリスの読書家たちを惹きつけるのか…その理由をひも解いた。 (NNNロンドン支局 鈴木あづさ)
■イギリス人は“本の虫”
ロンドンで最もうらやましい光景の1つが、地下鉄の中でけっこうな人が本を読んでいることだ。理由の1つには「ロンドンの地下鉄が古すぎてWi-Fiが入らない」ことにあるのだが、もう1つの大きな理由は「日常生活に本が溶け込んでいること」にあると思う。 6月になれば曇天だろうが小雨が降っていようが「短い夏を満喫しなきゃ損!」とばかりに、屋外に登場するシャンパンバーやおしゃれなカフェに可動式の本棚が置かれる。好きなだけシェークスピアやディケンズ、オーウェル、エリオットなんかの名著を手に取ることができるし、地方のちょっとさびれた場所に突然、おしゃれな「ブック&ワインバー」が出現したりする。 図書館に行けば、古くなった蔵書を50ペンス(100円程度)または無料で分けてくれるし、店先に「好きな本を持って行く代わりに、あなたのお気に入りを置いていってね」なんて看板が出ていたりもする。個性光る独立系の書店も多く、工夫をこらしたオリジナルのトートバッグや文房具はおみやげにも大人気。こうしたユニークな書店をめぐるガイドブックも多数、刊行されている。 ことほどさように、道行く人のかばんをのぞけば誰でも1冊は本を持っていそうなくらい、とにかく本好きな国民性なのだ。
■『読書ってセクシー』“Z世代”が本に回帰
そんななか、英ガーディアン紙で意外なタイトルの記事に出会った。『読書ってセクシー』…え、どこかの国の大臣発言ですか? 思わず目を疑う。なんでも、1997年から2012年生まれの“Z世代”が紙の本や図書館に回帰しているというのだ。 スーパーモデル、シンディ・クロフォードの娘で雑誌「VOGUE」の表紙を飾る23歳のモデル、カイア・ガーバーが読書クラブを立ち上げ、「読書って、とてもセクシー」と語っているという。実際に昨年、イギリスでは6億6900万冊の書籍が売れ、過去最高を記録した。図書館の利用も71%増加。Z世代の書籍購入の80%がデジタル書籍ではなく、紙の本。Z世代に特に人気なのが、少女期や女性としての人生に関連するテーマだという。 イギリスで長い歴史を持つ週刊の政治・文化雑誌「Spectator」で、こんな記事も見つけた。タイトルはずばり、『日本の小説ブームの裏に何があるのか』。記事によれば、日本の小説が今、イギリスで人気を博しているという。物書きの端くれとして、これは看過できない!と書店に向かうと、「Criminally Good」(反則級に素晴らしい)という最上級の褒め言葉の下に、柚木麻子さんの小説「BUTTER」が平積みになっている。思わず「おおおお~」とため息をもらす。店内を探索すると、ほかにもさまざまな日本の作家の本が並んでいる。人気の裏に、いったい何があるのか?