早大卒、一流企業勤務の30代男性が「転職地獄」に陥った理由…公認心理師が「1日に3つ」ノートに書かせた内容
■来客にお茶を入れることで、何が得られるのか また、転職をくり返しても満足できないAさんに対して行ったのが、自分の内面にある本当の価値観を知るワークです。例えば会社で来客にお茶を入れる役割をバカらしいと感じている人に対して、「そのことで何を得られるのか」と深掘りしていきます。すると「社内の人がほっとできる時間を作っている。それを見て自分もほっとできる」といった、それまでは気づかなかった答えが出てきます。 価値観は何気ない行動にも関係しているので、「今、持っているバッグは、なぜ持っているのか。それを持つことで何を得られるのか」といった簡単な問いでもよいでしょう。実際、このワークで自分は何を幸せと感じるのかが出てきて、ハッとするクライアントさんは非常に多いです。 内面にある価値観を知るワークは「1日の中で3つ、よかったことを探して書く」ワーク同様、今やっていることに満足感を得ること、そして自分の内面を整えることにつながっていきます。特にAさんは「人のために」という気持ちが強かったので、自分がやっていること自体を楽しむ気持ちや、内部からわき起こるモチベーションを見つけることにもつながりました。 その後、少しずつ気持ちが安定していったAさん。「ずっと人に認められたいという承認欲求が強かったことに気づきました。本当に自分がやりたいこと、好きなことはなんだろうと考えるようになりましたし、自己肯定感も少し高くなった気がします」と話していました。 現在の会社で仕事を続けていくのか、それとも4社目に転職するのかはまだ決めていないそうです。先述したワークなどを通して、そこで働くことは自分の内面にどのような満足感を得られるのか、どうしたら自分が喜ぶのか、楽しいのか、ぜひ考えてみてくださいと伝えてカウンセリングは終了しました。 ---------- 柳川 由美子(やながわ・ゆみこ) 公認心理師 臨床心理士、産業カウンセラー、不安専門カウンセラー。鎌倉女子大学児童学部子ども心理学科卒業。東海大学大学院前期博士課程(文学研究科コミュニケーション学専攻臨床心理学系)修了。義母の末期がんの看病をきっかけにピアノ教師からカウンセラーを志し、自身の不安症の克服経験から、大学院等で「脳は心を解き明かせるか」「脳から見た生涯発達と心の統合」を学ぶ。2005年より大学やメンタルクリニック、企業研修などの活動を開始し、現在は「メディカルスパ西鎌倉」「メディカルスパみなとみらい」でカウンセリングを行う。1万回以上の個人セッション経験を通して相談者の共通パターンを発見。独自メソッドで解決に導いている。著書に『晴れないココロが軽くなる本』(フォレスト出版)、『不安な自分を救う方法』(かんき出版)。 ----------
公認心理師 柳川 由美子