早大卒、一流企業勤務の30代男性が「転職地獄」に陥った理由…公認心理師が「1日に3つ」ノートに書かせた内容
■「風が気持ちよかった」でOK カウンセリングではクライアントさんにさまざまな「宿題」を出します。ポジティブでならなければいけない、成長していなければいけないという思い込みによって不安を感じているAさんへの宿題は「1日の中で3つ、よかったことを探して書く」というもの。意識の向きやすい「自分に足りないもの」ではなく、「今あるもの、持っているもの」に目を向けることで心を安定させるワークです。よかった出来事だけでなく、なぜよかったのか、その理由も書いてもらいます。 最初は「よかったことなんてひとつもない」というクライアントさんが多いですが、五感を使って「心地よさ」にフォーカスすると見つかりやすいとアドバイスします。「散歩していたら風が気持ちよかった(理由は散歩に行くという行動に移せたし、五感を使って気持ちよさに気づけたから)」「いただいたお菓子がおいしかった(理由はくださった方の優しい心遣いに幸せを感じたから)」といった具合です。Aさんも1カ月ほどで「よかったことって、意外にたくさんあるんですね」と話していました。 ■米国心理学の権威が行った実験の結果 2005年に米国の心理学者、マーティン・セリグマン博士が行った研究では、このワークを就寝前に1週間続けて行ったところ、幸福度の上昇と抑鬱状態の改善が見られたことが報告されています。しかも、その状態は6カ月間続いたそうです。セリグマン博士は、心理学の目的を「病気を治す」視点から「人々がどのようにすればよりよい人生を送れるか?」という視点に転換し、ポジティブ心理学を創設。その発展に寄与した人物です。 Aさんもそうですが、クライアントさんは「自分だけがネガティブだ」という思考に陥りがちです。でも、気持ちをうまく切り替えられる人は、そもそもカウンセリングには来ません。「人間は危険を察知するための防衛本能として、今この瞬間よりも過去の嫌なことや未来の不安にフォーカスしやすい。落ち込むのもネガティブなのもあなただけではない」と伝えると、安心する人は多いです。だからこそ五感を使って、今ここに意識を集中するマインドフルネスが大切なのだと伝えています。