全日本5位・松生理乃が悪戦苦闘の3年間から見出した活路「経験が次につながると実感できた」
【大舞台で披露した質の高いスケーティング】 SPは70・79点で大台に乗せた。3本のジャンプをすべて降り、スピン、ステップとすべてレベル4だった。GPシリーズで苦戦していたSPで、国際スケート連盟非公認ながらシーズンベストスコアを達成だ。 「ショートはノーミスの演技できて、感謝の気持ちがあったからこそ、伸び伸びと滑れたと思います!」 松生は少し弾むように言う。実直な人柄が、誠実なスケーティングと符合する選手だ。 フリーでは『Lux Aeterna』で「永遠の光」を表現している。銀色のような衣装でストーンをきらめかせ、序盤からループ、ルッツ、フリップ、アクセルとコンビネーションを含めて、次々にジャンプを成功させた。力みがなく、颯爽とした滑りで、引力のような表現力があった。演技構成点は66.85点と3番目に高く、スケーティングの質が評価される彼女の面目躍如だ。 ただ、最後の3回転サルコウが2回転になってしまい、得点はあと一歩、伸びなかった。 「フリーでノーミスできなかったのが悔しくて。フィンランド大会でもサルコウだけ失敗し、練習でも同じミスをしていたので......不安に感じていたのもあったのかもしれません」 松生は、柔らかい口調に無念さを滲ませた。 「これを跳んだらって気持ちだったんですが、そこだけ平常心になれない部分が出てしまったと思います。失敗するかもしれないって慎重になりすぎたのか、考えすぎてタイミングがずれちゃったのかもしれません。ひとつ壁を越えられたんですけど、最後の最後で完璧な演技ができないのが、今の自分の弱さ」
【トップを見るとまだまだ足りない】 彼女は自らを責めたが、「復活」を告げる大会になったのは間違いない。 「私は悔しい気持ちでいっぱいだったんですけど、(山田満知子)先生から『完璧とはいかなかったけど、(山下)真瑚ちゃんも、(和田)薫子ちゃんも、みんな良い演技だったよ。ありがとう』って言ってもらえて。最終グループに残れたのはうれしかったし、なかなかできなかったことなので、この経験をまた次に活かせたらなって」 松生は惜しくも表彰台を逃したが、その経験も次につながるのだろう。ひと足飛びではないスケート人生で、身につけられるものもある。その点、実は彼女はフィギュアスケートに愛されていると言える。 「GPシリーズで表彰台に上がったり、全日本で最終グループに入ったり、少しずつ成長できていると思うんですが。トップを見るとまだまだ足りないって感じるシーズンでした。これではダメで、来年も成長し続けないと!」 松生は言う。スケートと対峙し続ける。その真剣さが、彼女の人生を導くはずだ。来年2月、韓国・ソウルで行なわれる四大陸選手権の派遣選手に選ばれている。
小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki