全日本5位・松生理乃が悪戦苦闘の3年間から見出した活路「経験が次につながると実感できた」
【逸材が過ごした悪戦苦闘の日々】 12月、大阪。フィギュアスケートの全日本選手権女子シングルは白熱した攻防となった。 <写真>松生理乃…全日本フィギュア2024フォトギャラリー 松生理乃(20歳/中京大学)はショートプログラム(SP)、フリーどちらも5位で健闘した。合計204.00点で総合5位に入賞している。表彰台に上がったわけではない。しかし、一つひとつのエレメンツが丁寧で、凛としたスケーティングで会場を沸かせた。 「昨年、一昨年と全日本ではいっぱい失敗して、わけがわからないまま終わってしまった。今年は(フリーの)最後の一つのミスでこれだけ悔しいっていう思いになっているのは、成長できているのかなって思います」 松生は、大会をそう振り返っている。この3年間、彼女は悪戦苦闘の日々を過ごしてきた。 2020年の全日本、松生は当時ジュニアながら4位に入る躍進で「次世代の逸材」と注目を浴びた。ところが、2021年は足首のケガもあって思うような演技ができず、全日本は7位と表彰台から遠ざかった。そして2022年も喘息で体調不良に悩み、全日本は13位とさらに順位を落とした。2023年も調子は戻らず、17位と低迷することになった。 「今回の全日本も緊張していましたけど、去年のように体が動かないことはなくて。だいぶ試合に慣れることはできて、強い気持ちで演技できるようになったかなと思います」 そう語った松生は、いかに活路を開いたのか?
【経験が次につながる実感】 2年前の全日本後、言葉を絞り出す松生の姿は痛々しく映るほどだった。 「去年(2021年)はケガ、今年(2022年)は体調不良で......スケートとは別のところで滑れないというのはすごく悔しくて。たとえば、ジャンプの崩れだったら練習でもとに戻せるんですけど、その練習もできなくて」 当時、松生は意気消沈した様子で話していた。忸怩(じくじ)たる思いを抱えていただろう。しかも、その苦痛は思った以上に長く続いた。 今シーズンも、開幕直後は不安もよぎったという。 「シーズン入ってもフリーはノーミスできないって思うくらい、体力的にキツくて。練習でもノーミスできなかったので、不安はありました」 彼女はそう明かすが、戦いを重ねるなか、演技に自信がついた。今シーズンはGPシリーズに出場すると、スケートカナダで2位、フィンランディア杯でも2位につけた。どちらも、フリーで大きく順位を上げた形だった。そしてGPファイナル出場権も得た。 「経験してきたことは次につながるって実感して成長できたシーズン。出てきた課題を見直して、演技に反映できるようになりました」 松生は言うが、スケートと丹念に向き合うことで、おのずと結果につながったのだろう。一朝一夕ではなかった。しかし苦闘の日々自体が、彼女を着実に強くしたのだ。