「金20個」日本のパリ五輪総括:外国人コーチとの幸せな邂逅(かいこう)と「お家芸」が直面する危機
生島 淳
パリ五輪での日本の金メダル獲得は20個。銀銅を含めた総数は45個となり、海外で開催された五輪ではいずれも最多記録となった。成功を収めた競技で特筆すべきは海外コーチを招聘(しょうへい)しての体制づくりだった。一方、従来の体制で結果を残した「お家芸」も、競技人口減少という課題に直面している。
メダル数が証明する日本の多様性
パリ五輪は日本にとって大きな成功を収めた大会となった。 金メダル20個獲得は海外開催の五輪では史上最多。金メダル40個ずつのアメリカ、中国に次いで3番目の数字だった。それに銀12個と銅13個を加えて総数は45個、メダルを獲得した競技は16に及び、日本のスポーツの多様性が証明された(2021年東京五輪では金27個、銀14個、銅17個)。 金メダリストのなかでも存在感を放ったのは、陸上競技女子やり投げで前評判通りの実力を発揮した北口榛花(はるか)だ。マラソン以外の陸上競技の種目で、日本の女子選手が金メダルを獲得するのは史上初である。 北口は1998年、北海道生まれ。小学生からバドミントン、水泳に親しみ、いずれも全国大会の出場経験を持つ。やり投げを始めたのは高校入学後で、アッという間に頭角を現し2年生でインターハイを制した。 2016年に日本大学に進学したが、北口の探究心は無尽蔵だった。19年、ヨーロッパ遠征中にチェコ人のデービッド・セケラックのコーチングに興味を持ち、英文でメールを出して独力で師事にこぎ着けた。この行動力こそ金メダルの源泉であり、これまでの日本人には見られなかった資質だと言える。 以前の取材で、北口はチェコでのトレーニングについて話をしてくれた。 「チェコ語には日本語にはないやり投げ用語があります。本場でトレーニングするということは、日本にはない方法や発想を手に入れられるということだと思います」
外国人コーチの功績と戸惑い
この言葉で思い至るのはバレーボール男子日本代表だ。パリ五輪開幕前には世界ランキングが2位まで上昇し、1972年ミュンヘン大会以来のメダル獲得に期待が高まっていた。結果は準々決勝敗退となったが、日本に久しぶりにバレーボールの熱狂が戻った。 その一因となったのが、フランス人のフィリップ・ブラン監督の招聘だった。各国での指導経験を持つブランは2017年から日本での指導を始め、データ分析をもとにして最前線の理論をインストール。それが選手たちのスキルとうまくブレンドされて、日本は強豪国と対等に渡り合えるようになった。