「障害児のママは神様に選ばれた」周囲の優しくも、残酷な言葉が受け入れられなかった女性の葛藤描く作品に反響
■言葉の真偽が大切なわけではない 千尋あささんに、この漫画を描いた背景について伺いました。 「『障害児のママは神様に選ばれたと言われて』というタイトルは子育てをしているとチラホラ耳に入るフレーズでした。ただ、決してこの言葉の是非を問うお話ではありません。この言葉をはじめ、よかれと思って投げかけられた言葉が励みになる方もいれば、心が晴れない方も、きっとどちらもいます。感じ方は人それぞれだというところを理解しながらも、その言葉にできない気持ちを表現できればと思い、漫画の題材にしました。
私も、今でこそわが子がかわいくて楽しい毎日を過ごしていますが、作品の主人公と同じように、障害児子育てに悩み、苦しんだ時期がありました。作品を通して振り返れば、苦しかったのは自分の視野が狭かったことも理由のひとつだったと思います。それが、療育先で出会った先輩ママたちに育児情報を教えてもらったり、SNS上で似た境遇の経験談をもらえて勇気づけられたりしたことで、環境を変えたり、勉強したりするようになり、『自分の主観がすべてだと思い込まない』と考えられるようになりました。おかげで、心の容量が増え、人の見方、言葉の受け取り方が変わったように思います」
障害児を育てる中で千尋さんが感じてきた自身の葛藤と向き合い、それを乗り越えたきかっけなどの経験をベースに丁寧に描かれたこの創作漫画。クライマックスは相談支援員の方の次のような言葉で締め括られます。 「答えは人の数だけあるのだから、その言葉の真偽が大切なわけではない」「必ずしも親がそれを受け入れられる心情とは限らない。バリアを解くには痛みをわかち合える存在が必要で、『何を言われるか』より『誰に言われるか』が大切なときもあります」。
先輩ママたちに救われたことをきっかけに、今度は自身も応援する側になれたらと始めた漫画投稿。SNSでは「読んでいて励まされました」など、主人公と境遇が近い読者の方から多くのコメントが寄せられています。 取材・文/可児純奈
ちゃんと 編集部