【あの人の仕事場から学ぶインテリア / Case05】建築の個性を活かした空間づくりで心を刺激する
●建築の個性を生かしたアイテム選び。|林貴則(編集者)
クリエイターたちが、その創作哲学を表現する空間には、真似したいインテリアのアイデアが詰まっています。発売中の特集『仕事場とインテリア。』より、色使い、DIY、収納など、仕事場を形づくる独自の視点に迫ります。 【フォトギャラリーを見る】 全6回にわたる本企画の第5回は、住宅街にぽつんと残る平屋の元建築アトリエ。100平米の仕事場を編集者が独り占めする理由は、その造形以上に空間が醸し出す緊張感にありました。 ブロックに囲まれた空間の中央にあるガラス天井から、まぶしい外光が室内に降り注ぐ。「シンプルな平屋なのに、家らしさをまったく感じさせないのが良い」と話すのは、ここに事務所を構える〈Polar Inc.〉代表の林貴則さんだ。 丹下健三に師事していた建築家の妹尾正治が独立後に自身の事務所として設計したという建屋は、ちょうど10×10mの正方形。ブロック壁や黒い鉄枠の窓など、構造がむき出しになった居室はそこはかとない緊張感を纏い、東京・世田谷の穏やかな住宅街の中にいることを忘れてしまう。 「仕事場としてアクセスが良い場所ではありませんが、情報を遮断して、集中できるのは最高です」 アイデアに行き詰まり、さらに議論を重ねる必要があるときは、自然とプロジェクトメンバーがここに集まってくる。自分の仕事場としてだけでなく、皆がゆっくりと思考を巡らせる場所としての役割も担っていると感じることもある。 建物の個性を大切にしつつ、林さんのセンスを適宜プラスしているのもポイントだ。
床をピンクがかったオレンジのタイルに張り替えたほか、設計事務所が残していった長さ3mの会議机にモールテックスを3度塗り重ねて、素材感を変更。さらに空間の中央にあった配管の点検口を植栽スペースへと転用するなど、自由な発想で好みの空間にカスタムしている。 床下に収納スペースはあるものの、あえてモノを隠そうとは思わないと話す林さん。 「オープンな空間がこの物件の魅力。目線を遮らないよう、家具や棚の配置も工夫しています」 壁にさりげなく飾ったアート、テーブルの花瓶に生けた花、シェルフの上に並ぶ本など、隅々まで林さんの視線が行き届いている様子がわかる。 「心を刺激してくれるアートやオブジェを揃えることで、この場所にいるからこそ気づく視点や、ひらめきがあるような気がしています」
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