「病気を公開しながら、音楽を作っていく」――サカナクション・山口一郎、うつ病との闘い #病とともに
そして、収入もほとんど途絶えた。 「ミュージシャンってライブと作品の収入しかないから、本当に後から収入がビタッと止まった。確定申告の時、『あれ?』みたいな。結構びっくりしました」 「正直、こんな思いが一生続くのならば、『死んだほうが楽だな』と思ってしまう人がいることも理解できました。しんどかったけど、行動を起こすようなところまではいかなかった。想像はしましたけど。あと、飛行機の予約を取りかけたこともありました。もう全部捨てて、音信不通になって、故郷の北海道に逃げちゃおうかなって」
「上がったり下がったり」闘病生活の支えは
日々の病状は尾根のように上がったり下がったりを繰り返した。 「まず、それまで好きだったことができなくなった。音楽も聴かず、本も読めない。釣りにもファッションにも興味がわかなくなって、買い物もしなくなった。人ともほとんど連絡を取らなくなった」 それでも唯一、興味を失わなかったものがある。 「ずっと好きな中日ドラゴンズだけは、なぜか残った。ドラゴンズの全試合の情報を深夜にYouTube配信している人がいて、そのコンテンツにも救われました」
支えになってくれた友人もいた。 「高校時代の友人がちょうど上京して近所に引っ越してきた。その頃、僕はスイカと枝豆しか食べられなかったんですが、彼が枝豆をゆがいてくれたり鍋を作ってくれたりして、ずっと一緒にいてくれた。僕は無茶苦茶なことを言ったりもしていたらしいんだけど、そういうのも黙って聞いてくれて」 もう一人、支えになってくれた人がいる。 「(極楽とんぼの)加藤浩次さんは、僕の体調が一番悪かった時、『おう、思ったより元気そうじゃん? 全然大丈夫じゃん』と言って、いつもと同じように接してくれました。あの言葉には救われましたね。後から聞いたら、本当は『もう駄目だこいつ。休んだほうがいいわ』と思っていたらしい(笑)。でも、あそこで『お前、駄目だわ』と言われていたら、たぶん、僕は本当に駄目になっていたと思う」