「投資ビギナーあるある」の下落時「慌て売り」、実はもったいない⁉ 資産を増やすチャンス?
2年間の苦労の末に「浪花おふくろファンド」を立ち上げた中井朱美さんと石津史子さん。 【表】シニア世代の就業率は? 老後、1カ月の生活費の平均は? さあ、これから顧客を増やして頑張ろうと思った矢先に、なんと、あの未曾有の金融危機「リーマン・ショック」が発生します。どんどん下落する株価を前に、「浪花おふくろファンド」はどう立ち向かったのか。 予想もできなかった金融危機を乗り越えた彼女たちならではの奇策を、中井さんのインタビューでご紹介します。 【理想の投資信託を自分たちで作り上げた女性たちの物語②】
投信の基準価格が6000円台に!
リーマン・ショックが起きてから10数年が過ぎましたが、あの時の株価の下落というのは、今ふりかえっても強烈でした。 2008年9月15日にアメリカ大手証券会社リーマン・ブラザースが経営破綻したのをきっかけに、世界中の株価が暴落。日本でも、当初1万2千円台だった株価がどんどん下がり、2008年10月には7000円を割り込んだ日もあったのです。 「浪花おふくろファンド」は2008年4月の設定ですから、スタートしてたった5カ月で、未曾有の大暴落相場に遭遇しました。 投資信託には基準価格というのがあって、これが毎日変動します。最初は1万円からスタートし、日々、上がったり下がったりしながら、時間をかけて成長することを目指しています。暴落前、「浪花おふくろファンド」は10398円をつけた日もありました。ちょっぴり価格が上がっていたのですね。 しかし、リーマン・ショックにはあらがえません。9000円、8000円と日に日に基準価格が落ちて、2009年3月には6158円という最安値をつけたのです。 もし私が基準価格1万円のときに「浪花おふくろファンド」を10万円分買っていたら、評価額が6万1580円になり、約4万円の損。これは大ショックです。 この危機にどうやって立ち向かえばいいのか。中井さんたちには伝家の宝刀があったのです。
実はバーゲンセール中だった!?
「金融機関の営業担当に勧められたとか、ブームだからと、内容をよくわからないままに買っている人は、値段が下がったときはすごく怖い。慌てて売って、損をしてしまう人が多いんです」(中井さん) ひと言で投資信託といっても、インデックスファンドやアクティブファンドなど、いろいろな種類があります。 「浪花おふくろファンド」はファンド・オブ・ファンズという形を取っています。複数の投資信託を組み入れる投資信託なので、分散効果が効いて運用が安定します。当時、中井さんたちと一緒に働いていたファンドマネジャーは4本のファンドを選んで購入していました。それぞれのファンドは得意分野が異なるものの、中長期でじっくりと資産を拡大する方針を掲げています。そういったファンドを安い時に静かに買い増し、値上がりしたら売るという方法で資産価値を高めていこうという作戦なのです。 当時、「浪花おふくろファンド」は、毎週のようにセミナーを行っていました。たとえ参加者が数人であっても、中井さんたちの熱意は変わりません。顧客に対して、ファンドの内容、長期投資の考え方をこんこんと伝えたのです。 とくに強調したのは、価格が下がったときに慌てて売るのではなく、普段どおりに積み立て投資を続ける。もし余裕があれば、逆に買い増しをするということです。 「自分で納得して、応援したいと思って買ったファンドなら、値段が下がっても簡単には売らないし、今は大変な時期だから応援買いをしようという気持ちになってくるんです」(中井さん) 本来なら1万円の投信が、今だけ7000円で買える。大変お得なバーゲンセール中なのだ、と考えることもできます。徹底したセミナーの積み重ねで、「浪花おふくろファンド」の顧客は納得し、この下落相場で追加資金を入れてくれたのです。 その結果、びっくりするようなことがおきました。 この時期、世界中のあらゆる投資信託が売られて純資産総額を減らしていたのに、「浪花おふくろファンド」では純資産総額が減らなかったのです。7000円台という安値で投信を買った顧客は、その後、基準価格の上昇とともに、しっかりとリターンを得ています。 ▶続きの【後編】を読む▶ 投資初心者に大切なのは、納得して少しずつやってみるということ。
ライター 馬場千枝