脇道を出るときに忘れがちな「歩行者保護」|長山先生の「危険予知」よもやま話 第26回
JAF Mate誌の「危険予知」を監修されていた大阪大学名誉教授の長山先生からお聞きした、本誌では紹介できなかった事故事例や脱線ネタを紹介するこのコーナー。今回は脇道から出る際の歩行者や自転車への注意から、ドイツでは小学生から始める相手の意図を読み取る訓練のことまで、事故防止のエッセンスをたっぷり紹介してくれました。 【画像を見る】今回の危険予知のポイント(全5枚)
脇道を出るときに忘れがちな「歩行者保護」
編集部:今回は自転車に乗る人が主人公で、都心の広い歩道を自転車で走っている状況です。左に脇道がある部分を通過しようとしたところ、車が出てきて衝突しそうになるというものです。見通しの悪い路地から急に車が出てきたら、事故は避けられないですね。 長山先生:そうですね。自動車運転者はこのような見通しの悪い路地から出る場合、一時停止等の規制に従うのはもちろん、歩道の手前で停止し、少しずつ車の先端を出しながら、左右の安全確認をする必要があります。 編集部:ドライバーとして当然のことと思いますが、スーッと止まらずに出てくる車が多いですね。 長山先生:車が出てきた路地には一時停止の白線があったので、停止して歩行者や自転車に道を譲らないといけませんが、見通しが悪いので、つい左右が見える位置まで出てしまう運転者も少なくありません。また、このように脇道から歩道を横切って広い道路に出る場合、歩道部分に関する規制は曖昧で、運転者も適当にやっているように思います。 編集部:規制が曖昧とは、具体的にどういうことでしょうか? 長山先生:たとえば、問題の場所は歩道がいったん途切れ、脇道から続く車道を通ることになりますが、そこに横断歩道のゼブラが引かれている所もあれば、今回のようにゼブラが引かれていない所もあります。 編集部:たしかにそうですね。脇道の幅がわりと広く、歩行者が多い所には横断歩道のゼブラがあるような気がしますが、今回のように車1台分しか通れないような所にはゼブラがないことが多いような気がします。 長山先生:そうですね。道幅によって横断歩道の必要性が考えられているのでしょうかね? また、車が出てくる脇道のほうも、今回の場所のように白線が引かれている場合と引かれていない場合があって、場所によってバラバラで統一されていないようです。 編集部:問題の脇道は狭いものの停止線と止まれの規制標識がありましたけど、たしかにない所も見た気がしますね。 長山先生:そうなのです。運転者教育では、大きな道路同士の交差点に関しては明確に教えますし、駐車場などから歩道を通過する場合のことは教えますが、今回のように歩道が途切れている脇道を通過して広い車道に出る場合のことは明確に教えていないような気がします。自動車学校の教本を見ると、「歩道や路側帯を横切るときの注意」という事項で、「道路に面した場所に出入りするため、歩道や路側帯を横切るときには、その直前で一時停止するとともに歩行者の通行を妨げないようにしなければなりません。歩行者がいない場合も歩道などの直前で一時停止しなければなりません」と書かれていますし、そう教えられています。 編集部:たしかにそのように教わった記憶があります。歩道が途切れて車道が続いていると、つい脇道のほうが優先で一時停止する必要性を感じなくなってしまうのかもしれませんね。それ以前に左右の見通しが悪い脇道から出る場合、途切れている歩道の存在が見えず、歩道を横切っているという意識がないかもしれませんね。 長山先生:その可能性は十分あります。見通しの悪い脇道から出るようなときこそ、たとえ歩道が見えなくても、途切れている歩道部分を横切ることを想定し、自動車学校で教えられるように歩行者に道を譲ることを忘れないことが大切です。今回のように停止線がある場合はもちろん、停止線や一時停止の標識がなくても、歩道部分の通過時には、「歩行者保護」を厳格に守った運転をしなければなりません。 編集部:もし、事故が起きたら、ドライバー側の責任は重大ですね。