“名将”ノムさんがヤクルト監督ならオリックスの16連勝中“5冠エース”山本由伸をどう攻略するか?
ヤクルトの高津監督は、CSファイナルステージの巨人戦で「マダックス」と呼ばれる98球完封劇を演じた20歳の奥川恭伸を第1戦の先発マウンドに送り山本にぶつける考えを固めているが、橋上氏は、「野村さんであれば、奥川をあえて第2戦にずらすのではないか」という意見だ。 橋上氏が説明するように、1993年のヤクルトと西武との日本シリーズでは、チームの勝ち頭、13勝の伊東昭光、開幕投手を務めてエース格だった11勝の西村龍次、10勝の川崎憲次郎を差し置いて、5人目の先発の立場で8勝だった荒木を第1戦に送り込んだ。 対する西武の第1戦は左腕エースの工藤で、この年、15勝3敗で防御率タイトル(2.06)、最高勝率タイトル(.833)を獲得している。ノムさんは、「勝てたら儲けもの」の捨てゲームと考え、荒木をぶつけたが、制球に苦しむ工藤は2回KO、乱打戦となりヤクルトが8-5で初戦を取った。 続く第2戦は西村を立て郭泰源とのマッチアップとなったが5-2で勝ち連勝。シリーズは7戦までもつれたが、この連勝が効いてヤクルトが前年のリベンジを果たした。当時、クローザーだった高津監督は、そのシリーズの胴上げ投手。彼もノムラID野球を継承しているが、山本vs奥川のガチンコ勝負を選んだようである。 では山本をどう攻略すればいいのか。 「0-0で互いにプレッシャーをかければミスが起きるかもしれない。もしヤクルトが攻略すれば、一気に勢いにのり4勝1敗くらいのペースでシリーズを制する可能性はある。だが、山本は簡単には打てない。ではどうするか。野村さんは、こういうピッチャーにオーソドックスにいくことを嫌った」 橋上氏が山本に重ねるのは現在パドレスで活躍中のダルビッシュ有だ。 「ダルビッシュも山本と同じく球種が豊富で、そのすべてがカウント球であり勝負球。緩急をつけるカーブもあり、いつも打てなかった」 野村監督率いる楽天の2009年の開幕カードが日ハムで、開幕投手にはダルビッシュが予想されていた。3年連続2桁勝利をマークしていたダルビッシュは2008年も16勝4敗、防御率1.88の成績を残していた大エース。前年オフにこのカードが決まった時点から、ダルビッシュ攻略がテーマになったという。 当時、ヘッドコーチだった橋上氏は、野村監督に「オーソドックスにストレート待ちの変化球対応で打てるボールを待つ待球作戦でいくか、データを洗い出してダメもとで狙う球種を2つまでに絞って2ストライクに追い込まれるまでの早い勝負で打たせていくか。どうしますか。ただし、後者は、はまらなければ80%の確率で完投されます」と提案した。