女性の時計コレクターが急増中?──「女性たちはついに、ラグジュアリーで堅苦しい男たちの集いを壊そうとしている」
Dimepieceの創設者であるブリン・ウォールナー、時計業界の女性リーダーたちと、女性の時計コレクターの台頭について語る。 【写真を見る】女性コレクターの時計を公開!(全15枚)
女性が時計の世界でリーダーに
2020年、高級時計市場は最悪の状況に見舞われた。時計の供給は少なく、需要は高く、誇大広告が横行し、人々は家に閉じこもってお金を持て余していた。そして、時計に特化したソーシャルメデ ィアの台頭は、オークションの記録的な売り上げと流通市場の高騰をもたらし、誰もがコレクター、投家、専門家を気取って、時計に熱狂するようになった。サザビーズでの短期間の勤務を経て時計に魅了された1年を過ごしたが、時計学の初心者である自分自身が、何を求めているのかはわからなかった。 コンサルタント会社であるデロイトが2023年にまとめた『スイス時計産業調査』によると、女性時計バイヤーの未開拓の可能性は大きい。この経済状況にもかかわらず、女性たちはより多くのお金を稼ぎ、かつてないほど多くの高級時計を購入するようになった。女性を“未開拓”の成長市場とみなすのは、もう半分の可能性を見落としている。女性が時計の世界でリーダーとなり、発言力を持つようになったのはごく最近のことなのだ。 時計業界がこの女性パワーをどのように発展させることができるかを知るため、私は時計業界の主要人物となった3人の女性と対談した。 1人目はジニー・ライト。2021年1月にオーデマ ピゲ アメリカのCEOに就任した彼女は、時計マニアの世界に飛び込んだ。影響力のある女性のウォッチデザイナー、例えば、1976年に初の女性用ロイヤル オークを製作したジャクリーヌ・ディミエなどの才能を支持し、重要なポジションに任命してきた実績に誇りを持っている。 「消費者の95%を女性が占め、ブランドを経営していた化粧品業界からこの業界に入りました。時計の世界に入ったのは経営陣に女性が少なかったから。オーデマピゲのリージョナルCEOは6名のうち3人が女性で、本国のCEOであるイラリア・レスタも女性です」 もう一人は、クリスティーズの副社長であり、時計販売部門責任者のレベッカ・ロス。10年の経験を持つ正真正銘の時計の第一人者である。その昔、彼女の部署にいたのは全員男性だった。出世を続けるうちに、この業界で必要とされる女性の声を伝える人材として、自分の役割がいかに不可欠かを理解するようになった。 最後は、ファインジュエリーデザイナーであるローレン・ハーウェル・ゴッドフリーだ。彼女の所有する、とても希少なゴールドのロレックスの「コンコルド」こと「GMT マスター1675」や、ファクトリーで貴石をセットした常識外れの腕時計などを見れば、熟練した宝石商の目がいかに彼女のコレクションを支えているかは明らかだ。しかしゴッドフリーは、これらの時計を1 人で手に入れることはできな かったと強調し、信頼できる時計ディーラーが彼女のために二次流通市場やヴィンテージ時計市場の扉を開いてくれたことを評価している。 私たちは女性の存在感が「ボーイズ クラブ」をどう壊したのか、何を壊せていないのか、そして時計ブームの影響と、女性の時計コレクターが男性主導の群れから抜け出せる場所について語り合った。