地方都市の呪縛に縛られ、40歳まで私の生活は「婚活一色」だった。一度は諦めた結婚、50歳を目前に改めて、晩婚について考える
世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第28回は「中高年の結婚」です * * * * * * * ◆ぼんやりと過ぎる“結婚” テレビを見ていたら50代で結婚をした女優2人が、夫婦生活についてトークをしていた。2人、いずれにしても晩婚は実りあるものだと、とても幸せそうだった。ほほう。もちろんTVショーなのだから、不満を垂れまくるわけはないけれど。 生まれてから40歳になるまで、私の生活の全ては婚活に染まっていた。20代前半までは、実家のある田舎暮らしということもあり、「結婚して子どもを産んでこそ、女の幸せ!」と、信じきっていた。振り返ってみると、なんと恐ろしい呪縛だっただろうのか。結局、40代を迎えるとともに、結婚という意識は「別に結婚してもしなくても幸せだしな」と、新しい私の思考によってあっさり消された。自分が結婚生活に向いているタチではないことに気づいたのだ。 そんな最中、たまたま目にした晩婚の話題は……正直なところ、モヤッとした。パートナーを迎えたり、見送ったりしながら、20年間も単身生活を送っていると、他人と生活をともにする感覚がよくわからなくなっている。ただ、現代の人生の折り返し地点と言われる50歳を控える立場になると「また結婚もいいのかな」という思いもちらつく。ほら、もう同級生だった男子も人生を一回転(離婚や死別など)して、単身に戻っていると聞くし。 今回は晩婚について、今私にある知識で考えてみたいと思う。
◆リアル五十路婚 先日、東京から遠方に住む伯父(母の兄)夫婦と久々に会った。特に伯父に会いたかったわけではなく、彼が管理している祖父母の墓に行きたかったのが理由だ。まあ、伯父も80代になったので「これが最期なのかもなあ」と思いは浮かぶ。 そんな姪っ子の思惑をよそに、伯父夫婦は私を歓迎してくれた。その際にこんな伯母とこんな会話があった。 「あれ、伯母さんが再婚したのは40代後半?」 「そうだよ。ちょうど、今の久乃ちゃんの年頃。このくらいの年で結婚するのはね、いいもんだよ」 伯母はなぜか私のお腹をどつきながら、楽しそうに話してきた。彼らは互いに再婚の夫婦だ。伯父が50代、伯母が40代後半。その知らせを聞いた私は当時、20代。 子どもをつくることもないだろうに、なぜその歳になってまで「結婚」という選択をするのか、疑問を抱いていた。 ただ伯父夫婦も結婚して30年以上過ぎると、立派な熟年夫婦である。50年、60年の婚姻歴がある夫婦と、見た目は全く変わらない。むしろ長年連れ添った夫婦よりも仲が良く、幸せそうだと今の私の目には映った。俗にも言うが、20代で不倫ドラマ『SWEET SEASON』(TBS系・1998年)を見ていると、不倫カップルの仲を裂こうとする本妻の存在に、嫌悪感を抱く。それが四十路でもう一度見ると「これ、男が全部悪いじゃん」と冷静になる。このパターンと同じだ。 東京への帰り道、すっかり遠のいていた結婚の二文字が浮かぶ。 結婚経験がないのであくまでも第三者の立場で書くが、20代の結婚が勢いだとしたら、30代の結婚は(夫婦どちらかの)戦略で、40代は静穏なのだろうと周囲を見ていて思う。じゃあ、50代の結婚は何かと問われれば、ときめきに見える。「死が二人を別つまでその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」と、教会式で誓いの言葉を何度も聞いた。友人たちは幸せそうに「はい」と返事をしていたけれど、聞きながら(死が二人を別つまでって、結構時間があるよね~)といつも思っていた。それが晩婚なら半分くらいになる。 若くして結婚すると、周囲が当たり前のように妊娠を期待してくるプレッシャーや、まつわる親戚付き合いもある。不妊治療をしている友人たちは、本当に大変そうだった。が、晩婚ならそれもなし。その代わりに愛でるペットの名前を二人で考えるくらいだろうか。それも何だかいいなあと、またぼんやり考える。
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