出産は不可能と告知された女性「私は産みたいのか?育てたいのか?」35歳で不妊治療を断念し「里親にたどり着いた」
■父と継父の死で「血の繋がりは関係ない」と確信して ──その説明会がきっかけで、不妊治療を続けることにさらに迷いが生じたのですね。 岩朝さん:はい。そういった現実を突きつけられて、不妊治療をやめるかどうか、自問自答しました。「私は産みたいのか」、それとも「育てたい」のか、どっちなのかって。そのときに思い浮かんだのが、実父と継父のことでした。 母はシングルマザーとして私を育ててくれ、50代で再婚したのですが、ある日、その再婚相手、つまり継父が病気で危篤状態になったんです。継父は「父親ってこんな存在なんだ」と胸が温かくなるような背中を見せてくれた、大切な存在でした。その継父がいつ亡くなるかわからない状況のときに、実の父の危篤を知らせる電話があったんです。その奥さまからは「お父さんが会いたがっている」と言われました。でも、私にとって実の父は、血はつながっていても、ほとんど交流も思い出もない人でした。結局、私は何年も一緒に暮らして、私に愛情を注いでくれた今の父と最期を一緒に過ごすことを選びました。実の父は、育ての父よりも3日早く他界したのですが、後悔はありませんでした。
このことがあって「親子に血縁は関係ない」と実感できたし、たとえ子どもと血がつながっていなくても「かわいい」と思える、心から愛せると思えました。「産みたい」じゃなくて「育てたい」、「親になりたい」と思ったんです。
■里親になろうと決心するも夫は「なんでそんなに子どもなん?」 ── そのお気持ちをご主人に伝えたときはどんな反応でしたか? 岩朝さん:「里親になりたい」と相談した当初は全然、乗り気じゃなかったんです。「なんでそんなに子どもなん?ふたりで楽しく生きていこうよ」って。そりゃそうですよね。突然、里親なんて、夫からしたら青天のへきれきですから。でも、私は「子どものいない人生は考えられないから、申し訳ないけど離婚を想定した話し合いをしたい」と夫に申し出ました。そうしたら、「それなら話は別」と(笑)。話し合いを重ねた結果、夫も里親になることを決意してくれました。