出産は不可能と告知された女性「私は産みたいのか?育てたいのか?」35歳で不妊治療を断念し「里親にたどり着いた」
■「この体で妊娠なんて…なんて無責任な」と叱られ ── 高熱を出して苦しんでいるのに…なぜ怒られてしまったのですか? 岩朝さん:「いろいろな内臓を形成し直す手術を16回繰り返している体で、10か月間も赤ちゃんを育てることはできない。もし出産するなら、早産を想定した帝王切開になる」と。度重なる手術で何か所も癒着しているから、帝王切開ができる産婦人科はおそらく見つからないだろうとも言われました。そのドクターは「その不妊クリニックはなんて無責任なんだ」と怒っていましたね。
── それはおつらかったでしょう…。その後どうされたのですか? 岩朝さん:「どうしても妊娠出産を希望するなら、帝王切開の手術ができる産婦人科を見つけたほうがいい」と言われて、いろんな産婦人科に問い合わせました。でも、ドクターが言う通り、1軒も見つからなくて。ある病院からは「死にますよ」と言われました。それを聞いた夫に「きみと一緒にいたくて結婚したのに、子どもを産むことできみを失うなんて本末転倒だ」と言われ、たしかにそうだと納得したんです。でも、私は本当に子どもが大好きで…子どもがいない人生なんて考えられませんでした。
ただ、不妊治療をしている間に、たまたま「里親のボランティア募集」という記事を見つけて。中学生のときに友達が「里親のところに行くから」と引っ越していったことをふと思い出し、「もし産めなくても里親という選択があるんだ」と、少し気持ちが前向きになったんです。 その後、初めて里親制度の啓発ボランティアに参加したときに、親と暮らせない子どもたちの現状を知りました。いまや保護者がいない子どもや虐待に遭っている子どもが約4万2000人。その約8割が児童福祉施設で暮らしています。約20年前は、社会的養護が約3万6000人、里親委託率は11%程度でしたが、その現状を知った当時は、とにかくショックで。それ以来ずっと、自分の中でモヤモヤしていました。