独居高齢者の割合が全国1位の豊島区、4割が暮らす賃貸の受け入れ問題。居住支援の"パイオニア9人”が解決策を提案する最前線をレポート
「対応に困った大家さんや管理会社から入居者のかたについて『情報を教えてくれ』という相談は少なくない。行政として対応が難しいこともあるが、そこで終わらないようにしている。行政から家族や友人に連絡をとって『不動産会社が困っているから連絡してほしい』と伝えたり。連携によってコミュニケーションが取れていくはず」(豊島区中央高齢者総合相談センターの澤口さん) 「行政は個人情報において壁があり、難しいことも多いと確かに思う。一方で相談があった時点でその方の家族情報、近隣関係、病気もいろんな話を聞いて情報管理をしている。病院からの連絡や命に関わることについては個人情報の壁を突破できることも。関係者がそのかたにとって最も良い方法を考えながら検討できるといい」(豊島区高齢者福祉課基幹型センターグループの前場さん) 「民生委員さんなども含め、60歳で若手と言われるような制度・体制は限界がきている。もっと関係各者が一緒にやればいいじゃないと思う。各関係団体から数人が携わるチームを作ることなどが必要」(全日本不動産協会の鎌田さん) 「昔の不動産屋や大家さんは家賃を現金で受け取りに行ってそれが安否確認になっていたり、御用聞きをしたりしていた。現在はそういう風習がなくなったからこそ、プラットフォームをつくって情報共有して一元管理することが重要。ここにアクセスすればなんとかなる、という仕組みづくりが大事」(東京都宅地建物取引業協会の深山さん) パネルディスカッションは、パネリストのひとりとして第二部でも登壇した伊部さんの「今日このメンバーの顔がお互いにわかった、ということだけでも意味がある。日ごろからやり取りをすれば『こういうこと困ってて』という相談や『個人情報の壁があるけどどうにか一緒に考えよう』という声かけができる。これをきっかけに新しい豊島区の仕組みをつくっていければ」という言葉で締めくくられました。 セミナー終了後には多くの質問が寄せられ、その中の15の質問について一つひとつ回答したものが豊島区居住支援協議会のホームページには掲載されています。とくに「行政と民間の連携体制」「情報を共有するための仕組み」には多くの参加者が課題を感じた様子。ひとつのセミナーをきっかけに居住支援の取り組みが推進されていく、その萌芽を垣間見ました。これからの豊島区の居住支援の動きにも注目です。 ●取材協力 ・豊島区居住支援協議会 ・株式会社ハウスメイトマネジメント ・露木 尚文さん(豊島区居住支援協議会副会長) ・深山 大介さん(東京都宅地建物取引業協会第四ブロック豊島区支部 社会貢献委員長) ・鎌田 隆さん(全日本不動産協会東京都本部豊島・文京支部 副支部長) ・竹村 敏さん(民生委員・児童委員) ・大曽根 誠さん(豊島区保健福祉部 高齢者福祉課高齢者事業グループ) ・前場 徳世さん(豊島区保健福祉部 高齢者福祉課基幹型センターグループ) ・澤口 清明さん(豊島区保健福祉部 中央高齢者総合相談センター) ・宮坂 誠さん(豊島区社会福祉協議会 共生社会課) ・伊部 尚子さん(日本賃貸住宅管理協会 あんしん居住研究会)
唐松 奈津子(りんかく)