しげるは「いやいやえん」を改革せねばならない
元々石破茂という人は、自民党内非主流派で、党内主流派の思惑とは別に、筋の通った意見を言う人というポジションだった。ところが、首相就任後の石破首相の言動はぶれまくっている。 そもそも彼は、総裁選前は早期解散選挙には否定的だった。それが、首相に就任した途端に、衆議院を解散して選挙を実施した。おそらくは「内閣支持率が高いタイミングでなるべく早期にみそぎ選挙を実施する」という党内主流派の立てたシナリオに逆らえなかったのだろう。その結果、選挙の準備不足による投票時間の短縮をはじめとした国民の投票権の侵害が続出した。 今年7月の政治資金規正法改正のきっかけとなった政策活動費の使用についても、10月9日の段階では、「適法の範囲内で使用する可能性を否定しない」としていたが、13日になると一転して「選挙に使うことはしない」という態度に転じた。 批判が大きい現行の健康保険証廃止とマイナンバーカードへの切り替えも、総裁選の段階では「先送りも検討が必要。併用も選択肢として当然」と言っていたものが、首相就任・組閣後の10月2日には早くも平将明デジタル相が「従来の日程通りに進めていきたい」と発言。11月5日には石破首相自身が、報道各社への書面回答で、「法に定められたスケジュールで進めていく」と、先送りを否定した。 衆議院選で石破自民党は裏金議員の一部を非公認としたが、後にその非公認とした候補にも公認候補と同額の政党交付金2000万円を支給した。これが、選挙運動期間中に発覚すると自民党は「党勢拡大のために自民党の選挙区支部(および県連)に支給したもので、選挙における公認/非公認とは関係ない」と説明した。 が、11月に入ってから日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が、候補が出なかった支部には政党交付金2000万円が支出されていなかったと報道した。本当に党勢拡大を目的に選挙区支部に支給されたものなら、候補のいない支部にも支出されていないとおかしい。つまり、実際には非公認候補にも実質公認候補と同じ扱いをしていたわけである。しかも、当選した非公認候補は、選挙後に自民党会派に復帰した。単に選挙民の目を欺くための非公認と言われても仕方ない状況だ。 ●保育園児ならいいけれど 延々と書き連ねるほどに私には、石破首相の右往左往が、そのまんまいやいやえんに放り込まれて翻弄される保育園児しげると重なって見えてくる。 しげる、いや石破首相はなぜ翻弄されるのか。いやいやえんの「なきたけりゃおなき。けんかしたけりゃけんかをするし、ゆびをなめたけりゃ、なめてもいいんだよ」の方針は、そのまんま過去40年近くも、日本で大手を振って徘徊(はいかい)している新自由主義と重なっている。 新自由主義とは乱暴に要約すれば「市場原理を最重視する」考え方だ。売れた物がいいもの、利益を上げ、株価が高い企業がよい企業。政党で言えば、選挙に勝てればよい、政権を維持できればよい、ということになろう。だから自民党は選挙に勝つためならどんなみっともないことも平気でやるようになった(という話を10月4日の回に書いた)。 そんな中で石破氏は、党内非主流派という立場から苦言を呈することがあり、氏はそこで評価されていたと思う。 責任のない立場ならば、いやいやを言っていれば良かった。おもちゃの自動車が赤いのがいや、保育園に行くのいや、お弁当を持っていくのがいや、泣くのがいや――。 が、いざ首相となっていやいやえんたる政治の現場に放り込まれたら、自民党内にまん延する「なきたけりゃおなき。けんかしたけりゃけんかをするし、ゆびをなめたけりゃ、なめてもいいんだよ」という新自由主義に翻弄され、いやがいやで通らず正論を正論として通せなくなっているのではなかろうか。「赤がいや」はともかくとして(調べると石破首相は共産主義・共産党に対して否定的ではある)。