公立大学って、国立大学や私立大学とどこが違う…? 「地域とのつながり」が強み
大学には、国立大学、公立大学、私立大学がありますが、国立大学と公立大学の違いは、案外知られていないかもしれません。長野県茅野市にある公立諏訪東京理科大学と山梨県都留市にある都留文科大学は、いずれも公立大学ですが、どんな特徴があるのでしょうか。2校の学長が語りました。(聞き手は「朝日新聞Thinkキャンパス」の平岡妙子編集長) 【写真】都留文科大学 加藤敦子学長
地元との近さ
公立諏訪東京理科大学・濱田州博学長 公立大学とは、地域の自治体が母体となって設立・運営する大学です。我々の大学は、地元が東京理科大学を誘致したのが始まりで、1990年に私立の短期大学として開校しました。2002年に4年制になり、18年に諏訪地域の6市町村からなる組合が公立大学法人を設立して、公立大学になりました。 「地域が主体となっている」ということからもわかるように、地元との近さが公立大学の大きな特徴だと思います。諏訪は製造業が盛んなので、工学部を設置して人材を輩出し、研究面では産学連携を進めています。地域の人々とも交流を深めていて、近所のお年寄りの家の雪かきを手伝う学生なども見られますよ。 都留文科大学・加藤敦子学長 都留文科大学も都留市と協力、連携しながら学生の教育をしています。戦後の教員不足の時期に設置された山梨県の臨時教員養成所を前身に、1955年に都留市が短期大学として創設し、2025年に70周年を迎えます。日本中から教員免許を取得するために集まったところなので、大学も設立当初から教員養成を中心としてきました。都留市との連携では、たとえば、学生が市内の公立小学校に教育実習に行くだけではなく、アシスタント・ティーチャーという形で通年の授業に関わり、実践的に教員の仕事を学んでいるのも、地域とのつながりの強さを示していると思います。
住民の9人に1人が学生の町
――設立の経緯もあって、都留文科大学は教員養成のイメージが強いですが、最近は就職先が多様化しているのですか。 加藤学長 そうですね。全学では卒業生の60%が民間企業に就職しています。小学校の教員を養成する学校教育学科は70%が教員になりますが、全学では教員が25%、公務員が15%です。 ――学生は地元出身者が多いのでしょうか。 加藤学長 学生の86%は県外から来ていて、約9割の学生が大学の近くで一人暮らしをしています。それを70年続けてきていますので、地域の方々は学生を迎え入れて見守ってくれています。都留市の人口約3万人に対して、本学の学生が約3500人ですから、9人に1人はうちの学生です。いわば学園都市のようなもので、そこに魅力を感じて入学する学生もいます。 地域の人たちとの交流という点では、大学の施設を地域の方に使ってもらっています。デジタル機器に触れられるスペースもあります。学生は子どもの学習支援やボランティア活動などで地域に入っていき、地域の方々も大学に入ってきてもらう。そういうことが日常的に行われているので、学生にとってはいろいろな人と触れ合い、さまざまな体験ができる学びの場になっています。 濱田学長 本学も県外からの入学者が多く、75%くらいで、9割くらいの学生が大学の近くで一人暮らしをしています。これは東京の大学とは違うところですね。