公立大学って、国立大学や私立大学とどこが違う…? 「地域とのつながり」が強み
一人暮らしを経験するメリット
――どちらの大学も7~9割くらいが県外からの学生ということは、全国の高校生がよく調べて選んで来ているのだと思います。大学選びのポイントとして、どんな点に注目してほしいですか。 濱田学長 大学時代に一人暮らしを経験できるのは、大きなポイントです。実家を離れることで、成長につながります。就職して初めて一人暮らしをするより、学生のうちに体験しておいたほうがいい。しんどくなったら夏休みと春休みの2カ月ずつ、実家に帰れますからね。周りに一人暮らしの学生がたくさんいるので、わからないことは質問できるし、いろんな経験ができます。また、公立大学の学費は、国立大学と同程度に抑えられています。経済的にも自宅から私立大学に行くのと、一人暮らしで公立大学に行くのとでは、実は費用は変わりません。 加藤学長 私たちの大学は、47都道府県のすべてから学生が来ていますから、さまざまな人と触れ合えます。安心して一人暮らしができるよう、大学としても環境を整備しています。学生が住むアパートはすべて大学が把握していますし、健康管理もしています。親御さんには、一人暮らしはいい経験になること、大学と地域が努力して環境を整えていることをお伝えしています。 学生の多くが大学のすぐ近くに住んでいるので、通学時間がほとんどかからないというのもメリットでしょう。1限のチャイムが鳴り始めてから家を飛び出して、鳴り終わるまでに教室に着く学生もいるくらいです。時間がたっぷりありますから、みんな本当によく勉強しますし、部活やサークル活動、ボランティア活動、アルバイトなど、充実した生活を送っているようです。 ――地元との結びつきから、得られるものも多いのですか。 濱田学長 諏訪地域は製造業の集積地です。毎年、約300人の学生が企業に出向いて自分で課題を見つけ、半年かけて解決方法を探るという授業を必修にしています。地域に多くの企業があり、協力してくださるからこそできる授業です。地元の一番の大企業であるセイコーエプソンとは、人材交流の協定を結んでいます。技術者や研究者が大学に教えに来てくれるだけではなく、毎年、学生を採用してくれています。24年は13人が入社しました。これは学生にも親御さんにも魅力の一つになっているようです。 加藤学長 地元の企業や都留市と連携し、産学官の協働を進めています。最近の例では、富士急行、都留市と協力して、富士急行沿線のまちの活性化に取り組みました。学生が沿線を調査して5つのサイクリングコースを考案し、マップを作成して各駅に置いてもらいました。地域活性化のほかにも、まちづくり、森林づくりなど、いろいろなところで地元の企業や自治体と協働しています。教室で理論を学び、キャンパスの外で実践的な活動をして、そこで得た知見をそれぞれの地元に帰って役立てています。地域との結びつきから得られる学びは少なくないと思います。 プロフィル 濱田州博(はまだ・くにひろ)/公立諏訪東京理科大学学長。東京工業大学工学部高分子工学科卒、同大学院理工学研究科高分子工学専攻博士課程修了。工学博士。信州大学繊維学部教授、繊維学部長、副学長などを経て、2015 年に信州大学学長。23年4月から現職。専門は繊維染色化学、繊維機能加工学、高分子化学。 加藤敦子(かとう・あつこ)/都留文科大学学長。東京大学文学部卒、同大学院人文科学研究科(国語国文学専攻)博士課程単位取得退学。文学修士。ソウル女子大学校講師、東京経済大学講師、都留文科大学文学部国文学科教授、附属図書館長、副学長などを経て、2023年4月から現職。専門は日本近世文学。
朝日新聞Thinkキャンパス