2024年の真の流行語は「アザラシ幼稚園」? 本にも予約が殺到したアザラシ人気の秘密
アザラシ幼稚園―― 2024年の流行語大賞にもノミネートされ、ネット上を最も盛り上げたトレンドワードのひとつでしょう。オランダのアザラシ保護施設のライブ配信が日本で話題となり、SNSを中心に拡散された言葉でした。保護施設のYouTubeチャンネルには多数の日本のユーザーが大挙し話題となりました。 【画像】"アザラシ幼稚園"のプールで立ち泳ぎするアザラシたち。日本人のユーザーは親愛を持って「茶柱」と読んだ(他写真あり) 2024年12月に刊行された『アザラシまるごとBOOK』(辰巳出版)でもアザラシ幼稚園を取り上げるという情報が事前に出れば予約が殺到する事態に。日本人の大人も子どももなぜこんなにアザラシが好きなのでしょうか? 同書の担当者にお聞きすると、その人気の秘密と親子でアザラシの生態触れることで学べることについてお聞きました。
爆発的に話題になった「アザラシ幼稚園」
――今、アザラシが人気のようです。なぜでしょうか? ぽよんぽよんのフォルムとまん丸な瞳、いつでも笑っているような愛嬌たっぷりの表情など、見た目の愛らしさが一番の理由だと思います。 ちょうど子育て世代の人は、子どもの頃に『少年アシベ』というアニメが流行していました。そこに登場するゴマフアザラシの赤ちゃん「ゴマちゃん」や、2002年に東京の多摩川に現れ連日テレビで報道された「タマちゃん」などの記憶もあって、野生動物のなかでは比較的、親しみのある動物なのではないでしょうか。 アザラシを飼育展示している動物園や水族館も多く、実物を目にしたことがある人も多いでしょうから、その愛らしさはよく知られていると思います。 ――それが爆発的に話題になったきっかけが「アザラシ幼稚園」ですね。2024年流行語大賞にもノミネートされた「アザラシ幼稚園」について教えてください。 「アザラシ幼稚園」というのは通称で、正しくはオランダにあるアザラシ保護施設「ピーテルブーレンアザラシセンター」です。2024年の夏にX(旧Twitter)で、ある日本人ユーザーが「アザラシ幼稚園」という言葉でこの施設を紹介して話題になりました。 この施設では、怪我や病気で衰弱したアザラシ(おもに子どものアザラシ)を保護し、治療とリハビリを施して再び海に戻す活動をしています。アザラシたちのリハビリの最終段階では、広々としたプールでたくさんのアザラシたちが自由に泳ぎ回り、野生に戻る準備をしています。このプールの様子を施設のYouTubeチャンネルで24時間ライブ配信していて、その配信が注目を集めました。 ――どんな配信でしょうか? アザラシたちが気ままに過ごす様子が映し出されているだけです。しかし、なんの作為もないその姿が「かわいい」「いやされる」と人気になり、数千~数万人の日本人がライブ配信を視聴しています。 ――12月に発売された『アザラシまるごとBOOK』ではアザラシ幼稚園を特集しているとか。 アザラシ幼稚園で暮らすアザラシたちのかわいい写真をたくさん掲載し、施設の活動を説明したり、個性豊かなアザラシたちを紹介しています。A4サイズの本で、美しい写真がたっぷり収録されているので、見ているだけで癒し効果ばつぐんです。 イラストを使ったアザラシの生態解説や、アザラシの種類の説明、国内でアザラシに会える施設の紹介など、盛りだくさんの内容で、図鑑のように眺めたり、お出かけの参考にしていただけると思います。 ――子どもが見ても楽しめますか? 楽しめると思います。ルビは振っていないので、親子でお話ししながら見ていただくのがおすすめです。形がシンプルなアザラシはお絵描きの題材にもぴったりです。 国内ではたくさんの水族館や動物園でアザラシに会うことができます。本書に掲載されている施設リストはその一部ですが、ぜひ本物のアザラシにも会いに行っていただきたいです。水中での動きは驚くほど俊敏ですし、好奇心旺盛なくりくりの目でこちらを見つめてきたりして、見ていて飽きないと思います。 もし何頭か一緒に展示されていたら、ぜひそれぞれのアザラシの表情や性格、仕草に注目してみてください。人間や犬猫と同じように、アザラシにも感情や個性があります。遊んでいるときは楽しそうな顔をしていますし、いたずらっこな瞳で他のアザラシにちょっかいを出している姿もあります。 前脚(ひれ)をぺちぺちしていたら、それは「やめて」と言っています。そういうときは、いかにも迷惑そうな表情をしていると思いますよ。泳ぎ方も様々で、急にスイッチが入って猛スピードで泳いだり、お腹を上に向けたヘソ天ポーズで泳いだり、立ち泳ぎでぼーっとしていたり、それぞれに好みやブームがあるようです。 お子さんと「今、あの子は何を考えているんだろう?」「どんなおしゃべりをしているのかな?」など一緒に想像しながら観察してみてください。 ――動物園や水族館は「早く次に行こう」と慌ただしくなりがちですが、そういう見方も面白そうです。 数分だけでは、動物に表情や気持ちがあることはなかなかわからないかもしれません。 よく子どもに「命は大切に」とか「この動物は絶滅危惧種だ」などと教えることがあると思います。もちろんそういう教育はとても大切ですが、意外と子どもはピンときていない可能性があります。「命の大切さ」「絶滅危惧」「環境破壊」といった言葉がなかなか実感をともなわないのは、無理もありませんよね。 しかし、目の前にいる1頭のアザラシに注目することで、アザラシにも心があること、豊かな個性があることがわかってくると、その命に対する慈しみや畏敬の気持ちが生まれるのではないかと思います。その気づきがあれば、「命の大切さ」が心で理解できたり、動物が絶滅してしまうことの重大さを感じることができるようになるかもしれません。