アギーレ・チルドレン 皆川佑介が見せた可能性
左タッチライン際を抜け出し、駆け上がったFW岡崎慎司(マインツ)が絶妙のクロスをゴール前へ送る。初めて日の丸を背負って臨んだ一戦で先発の大役を担ったFW皆川佑介(サンフレッチェ広島)がニアサイドへ走り込み、186cm、84kgの巨体を宙に舞わせる。 両チームともにノーゴールで迎えた前半17分に、日本代表が迎えた絶好のチャンス。しかしながら、高い打点から放たれたヘディングシュートはゴールの枠をとらえられない。中央大学から今春にプロ入りしたルーキーは右手でピッチを叩きながら、悔しさを露わにした。「ヘディングは自分が得意としているプレー。岡崎さんからいいボールが上がってきたにもかかわらず、頭を振りすぎてふかしてしまった。あそこで決めていればチームも楽になったと思いますし、その意味では責任を感じています」。 9月5日、ウルグアイ代表を札幌ドームに迎えた、ハビエル・アギーレ新監督に率いられた新生日本代表の初陣。ホテルを出発する前に行われたミーティングで先発を告げられた皆川は、気持ちの昂ぶりこそ感じたものの、不思議と緊張することはなかったという。「練習でのメンバーの分け方や練習方法などで、自分がスタート組だというのをだいたいわかった上でプレーしていたので、心の準備はできていました」。 任されたポジションはスリートップの中央。キックオフ直前。右の本田圭佑(ACミラン)と左の岡崎からは、こんな声ともに叱咤激励された。「困ったときにはオレたちを見ろ。オレたちがサポートするから自分のプレーをしろ」。アンカーに入った森重真人(FC東京)とインサイドハーフの細貝萌(ヘルタ・ベルリン)も、背中を押してくれた。「後ろにはオレたちがいるから、好きなようにプレーしろ」。 ワールドカップ・ブラジル大会にも出場したウルグアイ代表のキャプテン、DFディエゴ・ゴディン(アトレティコ・マドリード)の強烈なプレッシャーを背後から受けながら、後方からのロングボールを必死にキープ。味方が攻め上がる時間を稼ぎ、ときには相手のファウルを誘った。「チームメイトの声掛けやサポートが心強かった。自分が余裕を持ってプレーできたのも、味方のおかげなので感謝しています。ゴディンはテレビで見る選手でしたし、強さを実感するととともに、ああいうトップの選手ともっとやり合いたいと思いました。ゴディンに通じた部分ですか? それはメディアの皆さんや観客の方が決めることだと思いますけど、自分なりには少しは通じたのかな、アピールできたのかなという手応えはあります」。