アギーレ・チルドレン 皆川佑介が見せた可能性
新生日本代表に招集された時点で、J1の出場試合数はわずか「7」だった。デビューはワールドカップによる中断から再開されて2試合目となる7月19日の大宮アルディージャ戦。アギーレ監督が初めて視察した8月16日の浦和レッズ戦の後半14分から途中出場していたが、周囲よりも皆川本人がサプライズを感じていた。皆川は、いまでもこう言ってはばからない。「自分はまだまだここ(日本代表)にいる選手だと思っていないので」。 冒頭の15分間のみが公開された3日の練習後に、アギーレ監督から呼び出された。ピッチの上で急きょ行われた青空会談で、55歳のメキシコ人指揮官は代表に抜擢した理由をこう説明している。「相手ディフェンダーと戦い、ハードワークして泥臭くプレーしているところを評価した」。 同じ長身FWタイプには豊田陽平(サガン鳥栖)がいるが、アギーレ監督は8月11日の就任会見で選手選考の条件のひとつとして「将来性のある選手を選ぶ」と明言している。29歳でほぼ完成の域に達している豊田に対して、22歳の皆川は成長途上で荒削りゆえに磨けば光る要素を感じさせたのだろう。そして、アギーレ監督の言葉は皆川の背中を強烈に押した。迷いも払拭してくれた。通訳を介したわずか数分の会話を、皆川自身は「自分のよさを再確認することができたし、自信にもなった」と振り返る。不慣れな「4‐3‐3」システムにチーム全体が戸惑いを隠せない中で、ウルグアイの屈強なDF陣と戦い続けた姿勢は十分に及第点に値すると言っていい。皆川も代表デビュー戦をこう振り返る。 「90分間を通して戦い続けるのは自分の持ち味。最初は相手に通じていたかもしれないけど、それを対応されてきても、相手の嫌なこと、嫌なことを何回も繰り返してやれたと思う」。 大学卒業を前に、日本サッカー界でも稀有な長身FWのもとにはJ1の複数のチームからオファーを届いた。最初にサンフレッチェの練習参加した瞬間に入団を決め、残るチームに対しては練習に参加することなく断りを入れた。サンフレッチェには不動のエース、元日本代表の佐藤寿人がいる。それでも、皆川の決意は揺らぐことがなかった。「サンフレッチェを選んだ理由はファーストインスピレーションじゃないですけど、練習に参加したときの雰囲気がよくて、ここでサッカーをしたいという気持ちを強く感じたので決めました。自分にとっては最も試合に出にくいチームを選びましたけど、サンフレッチェで試合に出られるということは寿人さんにも勝つことを意味するので。常にゴールに直結するプレーをしている寿人さんの技を見て学んだことも多々ありますし、その意味では日々勉強になったと思っています」。