アギーレ・チルドレン 皆川佑介が見せた可能性
ワールドカップの中断期間中にJ2のあるクラブから期限付き移籍のオファーが届いたが、皆川の成長を感じていたクラブ側が断りを入れたという。8月に入ると起用法を巡ってサンフレッチェの森保一監督と確執が生じた佐藤がベンチを温めるケースが多くなり、必然的に皆川の出場時間が増え、視察したアギーレ監督やフアン・イリバレン・フィジカルコーチの目に留まった。 自身の預かり知らぬところで発生した「追い風」が新生日本代表抜擢につながったが、だからといって皆川は自分自身の現在位置を見失うことはない。「サンフレッチェで試合に出られないときに自分の技を磨いて、試合に飢えて、結果にも飢えて、その気持ちを忘れずにやってこられたからこそいまがあると思っている。そういった部分を見てくれていた人がいることに感謝するとともに、これからも自分は足元をしっかりと見つめて、日々努力して、精進しながらやっていかなきゃいけないと思っています」。 後半13分にFW武藤嘉紀(FC東京)との交代を告げられた瞬間、皆川の胸中には複雑な思いが交錯したという。「正直、もう少しやりたかったという思いはあるし、代表戦のピッチに立っている間は純粋に楽しかった。このピッチでまたプレーしたいという気持ちも芽生えてきましたし、そのためには今日できた部分の質をもっと上げて、できなかった部分を改善していかないと。課題ですか? 後ろのみんなが辛いときにもっと体を張らなきゃいけないし、もっと縦パスを要求する回数を多くして起点にならないと」。 2014年9月5日に体験した58分間だけでは、描き続けてきた夢を終わらせない。無限の潜在能力を類希な体躯に宿らせた期待の大型FWは、再び日の丸を背負って戦う姿を思い浮かべながら9日のベネズエラ代表戦(横浜国際総合競技場)を見すえていた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)