感染症の文明史【第3部】地球環境問題と感染拡大 1章 人類が自ら招いた危機:(3)食肉の大量生産システムが生む耐性ウイルス
米ミズーリ大学のインフル・新興感染症センターのヘンリー・ワンは、ニューヨークの地下鉄やブルックリンの公園で捕獲されたネズミが新型コロナのオミクロン株に感染した証拠を見つけた。ネズミはペットではないが、ヒトと同じ生活圏で暮らしている。オーストラリア、オランダ、ベルギーなどの研究者からも、新型コロナウイルスが、ヒトからネズミに感染して、それが変異して再びヒトに「ブーメラン感染」した可能性が指摘されている。ヒトも地球に住む動物の1種であることを改めて思い知らされる。 (文中敬称略)
【Profile】
石 弘之 環境史・感染症史研究者。朝日新聞社・編集委員を経て、国連環境計画上級顧問、東京大学・北海道大学大学院教授、北京大学大学院招聘教授、ザンビア特命全権大使などを歴任。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞などを受賞。主な著書に『名作の中の地球環境史』(岩波書店、2011年)、『環境再興史』(KADOKAWA、2019年)、『噴火と寒冷化の災害史』(同、2022年)など。『感染症の世界史』(同、2018年)はベストセラーになった。