中学受験「前受け」入試の合格・不合格が与える「想像以上に大きな影響」
6月になると、中学受験「夏期講習」というチラシも増えてくる。 中学受験に挑む割合は増加している。 大手進学塾サピックスが文部科学省の「学校基本調査」と森下教育研究所のデータから、2023年度の首都圏の中学校受験者数は4万3000人と発表した。 【マンガ】受験生以外にも響く!中学受験を舞台とした『二月の勝者』12の名言 しかし、中学受験という試験に「挑む」ことは素晴らしいことだが、それぞれの家庭や子どもが違うように「中学受験をしないとならない」ということでは決してない。 大切なのは、「周りが受験しているから」ではなく、「子どもがどうしたら幸せになるか」「子どもがどうしたいか」ではあるのだろう。 「勉強嫌いの息子の中学受験は、完全に親のエゴでした。でも最後に『中学受験をしてよかった』という息子の言葉を聞いてホッとしています」 こう語るのは、森将人さん。慶應義塾大学を卒業した元大手証券ディーラーだ。 どのように「親のエゴ」と感じたのか。そして子どもとどのようにコミュニケーションを取り、「やってよかった」という言葉が出てきたのか。 森さんが率直につづる連載第6回は、6年生の1月。都内に住む森さん一家にとって、1月と言えば「前受け」が始まるころだ。 東京の中学受験は、「天王山」と言われる2月1日を筆頭に、多くが2月に行われる。その前に、埼玉や千葉などの学校や地方の学校の東京受験などを1月に受験することが「前受け」である。 連載5回では、慶應を第一志望、立教新座を第二志望としている森さんの息子が、長野県の佐久長聖という学校を「前受け校」として受験したことをお伝えした。 合格不合格を確認するのも、本番に向けて緊張する時期難しいことだ。その繊細な時期をどのように過ごしたのだろうか。連載6回ではその繊細な時期に起きたことをお届けする。
小6の1月「前受け」校の結果は…
中学受験で我慢の日々を送ることになるのは、受験生だけではない。親はもちろん、きょうだいも大きな生活の変化を迫られる。小学3年生になる妹の青葉も同じだ。孝多(仮名)はリビングで勉強するので、勉強中は静かにしていなければならないし、週末に家族で遊びに出かけることもなくなった。 テレビは11月に孝多が壊して以来映らないので、息抜きといえばタブレットでユーチューブを見るくらいだ。食事や風呂の時間は孝多の勉強に合わせて決められるし、不平をいうとわがままをいうなと怒られる。青葉にとって孝多を中心に回る生活は窮屈だが、今だけの辛抱と割り切っているようだった。 逆に孝多が塾に行っている時間は、普段我慢させている分、女王様のような扱いだ。買いものに行けば好きなものを買ってもらえるし、リビングで大きな音で曲を流しながらダンスの練習もできる。この落差が大きくなるほど、きょうだい二人の会話は少なくなっていく。 6年生の1月。はじめての受験で、佐久長聖中学を受けた週末のことだ。天気が良かったので、青葉が妻と遊園地に出かけていた。近場とはいえ、久しぶりの外出に青葉は大喜びだ。ぼくが留守番して、孝多の勉強につき合うことになった。 入試の結果は、無事合格だった。しかもA特待での合格だ。受験生の上位10%に入る好成績で、入学金、施設使用料などが全額免除される。中学生から寮に入る予定ではないので、行かない可能性が高いが、自信を持っていい結果だ。