中学受験「前受け」入試の合格・不合格が与える「想像以上に大きな影響」
過去問の好調の影の「疑惑」
ぼくが帰ってからダンス教室に青葉を迎えに行き、過去問の答え合わせをすると、不思議なことに気づいた。算数の答案に、数ヵ所消し跡が残っている。答えを書くだけなので書き間違えることが多いはずがないと思って調べてみると、問題用紙に書かれた計算が妙に少ない。 嫌な予感がして計算用紙を確認したが、数問は計算の跡があるが、多くは何も書かれていない。ぼくが自分で解いてみると、暗算でできるような問題ではない。計算せずに回答するのは不自然だ。 慌てて前日にやった過去問の答案用紙を確認すると、こちらも計算がないのに答えが正しい問題がある。写したのだろうか。ぼくも妻も出かけていたので、過去問をやったときは一人だったはずだ。 孝多が塾から帰ってくるのは、9時過ぎになる。ぼくが問題用紙と答案用紙を見せると、妻は信じられないという風に首を振った。 「そんなことしないでしょ」 「たまたま計算の結果が合っていたとは考えにくいよ」 「どこかに計算してるんじゃないの?」 「計算したメモを捨てていない限り、それはないと思う。普通はそんなことしないだろ」 「答えを見たっていうこと?」 「考えたくないけどな……」 ◇状況証拠は息子が「答えを写した」と言っているように見える。しかし本当にそういうことをしているのか。している場合、どうしたらいいのだろうか。 その後の話は後編「中学受験「過去問」の好得点に不自然な消し跡…息子を追いつめた合格のプレッシャー」で詳しくお伝えする。
森 将人(元証券ディーラー)