「世界初導入」ロボットが支えるBEAMSの新物流拠点、アパレルの次世代自動化技術
消費者ニーズの多様化や生産年齢人口減少を背景として、入出荷量の波動が大きいアパレル業界にも自動化の波が押し寄せている。ユニクロやZOZOなどの自動化の取り組みが広く知られているが、さまざまなブランドを取り扱い、さらなる少量多品種の宿命を背負うセレクトショップのBEAMS(ビームス)も新拠点設立に合わせて、世界初導入となるリニアモーター式ロボット倉庫の「CUEBUS」と、中国ハイロボティクスの「HaiPick SYSTEM」を導入した。ロボット機器を導入することで搬送の負荷やピッキング時のヒューマンエラーを減らすことができる。2つの自動化ソリューションが稼働し始めたばかりの現場に潜入した。 【詳細な図や写真】ビームスの東日本物流拠点「ビームス ウエアステーション」概要。3Fから入荷した商品を上階で保管、仕分ける。自社EC商品は封かんも行う(写真:ビームス提供)
ビームスの東日本物流を担う「ビームス ウエアステーション」
衣料品のセレクトショップとして知られるビームスは、同社最大の物流拠点「ビームス ウエアステーション」を東京都江東区新砂から深川地域の「DPL江東深川」に拡張移転し、2024年9月下旬から全面稼働させた。 延床面積は約9000坪。移転前の2倍程度となる。入出荷の機能だけではなく、より素早く出荷するため自社ECサイト用の撮影スタジオやカスタマーサービスデスクなどの機能も備えており、同社における東日本エリアの物流を担っている。 扱っている商品は120~130万ピース。いっぽう、SKU(Stock Keeping Unit:商品の最小管理単位)は5~7.5万近い。物量に対してSKUが多いのはアパレル業界特有だが、特にビームスはセレクトショップであるため扱っている商品が少量多品種とならざるを得ないからだ。扱う上でも立て積みしにくく、どうしても保管スペースが横に広がりがちなのは、セレクトショップならではの悩みだという。「倉庫面積2倍」としたのも今後の成長を想定したものだ。
新導入の2つの自動化ソリューションとは
「ビームス ウエアステーション」には新規に自動化ソリューションが導入されている。まず、概要をご紹介する。 1つ目は2015年創業のスタートアップCuebusが開発したリニアモーター式ロボット倉庫の「CUEBUS(キューバス)」だ。リニアモーターを内蔵したタイル上をトレーが移動することで商品を搬送する。簡単に設置できるため拡張縮小が容易、単相100Vでも動作するため大掛かりな工事が不要といった特徴がある。 Cuebus 自動倉庫「CUEBUS」 ビームスの倉庫では「CUEBUS」をハンガーにかけた衣服の入荷工程に活用している。トレー2つを協調動作させることでハンガーに衣服をかけたまま運ぶ「Zラック」の自動搬送を可能にした。同時にRFIDと検品ゲートを使って検品も自動化した。なお、「CUEBUS」が現場に導入されるのは今回が初めてだ。 もう1つの自動化機器は、ハイロボティクスの自律型ケースハンドリングロボットシステム「HaiPick SYSTEM」だ。「HaiPick SYSTEM」は高さ約4.7mのラック、「ACR」と呼ばれる自律型ケースハンドリングロボット、そしてポート「HAI PORT Workstation」という3つのモジュールで構成されるGTP(Goods To Person)方式のロボットシステムである。 ビームス ウエアステーション「HaiPick」 57台のACRを活用 HaiPickでは高い棚の間をロボットが動き回りながら左右の棚にケースを入出庫する。天井高を有効に活用することで多品種少量の商品を効率的に保管することができる。ビームスの倉庫では57台のACRを入庫・出庫に活用している。出庫への次工程には自動仕分け可能なソーターシステムをつなげて、店舗および自社EC顧客への仕分けを実現した。こちらは他にも導入事例はあるが、HaiPick SYSTEMの導入規模としては国内最大だという。 全体の投資金額は非開示。拠点全体のエンジニアリング設計を手掛けたのは豊田自動織機 トヨタL&Fカンパニーである。 ビームス ウエアステーション ハイロボティクス「HaiPick SYSTEM」