優勝で可能性をつないだバニャイア、24ポイント差で最終戦を迎えるマルティン/MotoGP第19戦マレーシアGP
MotoGP第19戦マレーシアGPの決勝レースは、一つの天王山だったのかもしれない。赤旗中断後、再開されたレースで、フランチェスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)とホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)が、4周にわたって激しいトップ争いを繰り広げた。 【写真】マレーシアGP決勝で表彰台を獲得した3名 バニャイアはレース後のトップ3会見で、「とてもアグレッシブではあったけど、とてもクリーンでもあったと思う。僕たちは一度も接触していないんだ」と、激しいオーバーテイク合戦を振り返った。バニャイアは前日のスプリントレースで、9コーナーのバンプによって痛恨の転倒を喫して後がない状態だったが、マルティンとの直接対決を制して優勝した。 「自分のペースが十分に反撃できるものだとわかっていた。でも、昨日(スプリントレース)も同じことを考えていて、うまくいかなかった。僕はただ、最善の方法であらゆるアタックに対して反撃しようとしただけなんだ」 「僕が予想していなかったのは5コーナーで、彼は外側で抵抗していた。でもそれ以外では、僕はブレーキングをハードにして、ギャップをできるだけ広げようとしていた。今日はホルヘも素晴らしかったと思う。残り3,4周で彼との差が詰まってきた。とてもタフだった。僕たちのレベルが素晴らしいものだと示したと思う」 一方、優勝は逃したものの、優勝に次ぐ最善の結果、2位で終えたマルティンはまず、「とても楽しんだよ。ありがとう、ペコ」と言った。 「こういうバトルは、キャリアを通じて初めてだったよ。もちろん僕たちはいつも接戦だったけど、3周で11回だったとか。そんなにオーバーテイクをしたことなんてなかった」 マルティンは、タイヤ選択が、少しばかりレース序盤の展開を難しくしたと言う。マルティンはフロントタイヤにミディアムを選んでいたからだ。対するバニャイアは、フロントタイヤにソフトを選択していた。 「僕としてはフロントにはミディアムが最善の選択だと思っていた。そのせいで、序盤の3周は、ちょっとしたギャンブルになったかもしれない。バイクを止めるのがすごく難しかったんだ。でも、とにかくペコと勝負ができてとてもうれしかったよ。彼のようなライダーをオーバーテイクするのはすごく難しいんだ。ブレーキングはものすごく深いし、彼はすごくうまくバイクを止めていたからね。もしトップでどこか1周を走りきれていたらちょっと違っていたんだろうけど……、でも、彼のペースは素晴らしかった」 マルティンは、7周目に、そのとき3番手を走っていたマルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)が転倒を喫したとき、「『2位で十分だ。このままいこう』と思った」と言う。レース終盤には再びバニャイアとの差が詰まり始めたが、9コーナーで転倒しかけたことで、「2位で十分だ」と思い直し、そのポジションでゴールを果たした。 バニャイアは、今回のレースで今季10勝目を飾っている。それでもチャンピオンシップでマルティンの後塵を拝しているのは、マルティンよりもレースでのリタイア率が高いからだ。 マレーシアGPを終えて、バニャイアは、スプリントレースで6勝、2位1回、3位2回、決勝レースでは10勝、2位1回、3位4回を獲得しているが、スプリントレースではリタイア5回、決勝レースではリタイア3回となっている。 これに対し、マルティンはスプリントレースで7勝、2位6回、3位2回、決勝レースでは3勝、2位10回、3位2回を獲得している。決勝レースでは圧倒的にバニャイアが強いということだ。しかし、マルティンはスプリントレースで1回、決勝レースでは2回しかリタイアしていない。 ちなみに(もちろん、あくまでも参考までに、ということだが)、決勝レースだけのポイント数では、バニャイアが345ポイント、マルティンが321ポイントとなる。シーズンの安定感とスプリントレースでの強さが、マルティンがバニャイアに対して24ポイントのアドバンテージを築いている一つの理由となるだろう。 マルティンは最終戦スプリントレースで、バニャイアに対し26ポイント以上の差を築くことができれば、マルティンのタイトル獲得が決定する。なお、最終戦として予定されていたバレンシアGPは、10月末にスペインのバレンシア州を襲った大洪水被害により中止となった。代替としてバルセロナ・カタロニア・サーキットで「モチュール・ソリダリティ・グランプリ・オブ・バルセロナ」が開催される。 今季第6戦カタルーニャGPでは、スプリントレースはマルティンが4位、バニャイアが転倒リタイア、決勝レースではバニャイアが優勝を飾り、マルティンは2位となっている。 マルティンはカタルーニャでの最終戦について、こう語っている。 「バルセロナは僕たちにとって相性のいいサーキットだと思う。ホームレースというのはいい気持ちにさせてくれる。たくさんの人が僕たちをサポートしてくれるからね。もちろん、今日はスペイン人にとって、スペインで起こったこと全てを踏えまると、いい日というわけではなかった。今日の表彰台は彼らに捧げたい。自分のためだけじゃなく、そういう人たち、チーム、僕の周りにいてくれる人たちのためにもチャンピオンシップで勝ちたいんだ」 そしてバニャイアは、「計算上はまだ(チャンピオン獲得は)可能だ。でも、それが難しいことはよくわかっている」と言う。 「でも、バルセロナではなんでも起こり得るんだ。僕が(前回)スプリントレースで1秒もリードしていて、クラッシュしたみたいにね。寒いだろうから、コンディションは6月と比べてもっとタフになるだろう。バルセロナでは二つのコーナー、2コーナーと5コーナーがとてもトリッキーだ。負けないようにすることが大事なんだろうけど、できるだろうと思っているよ」 チャンピオン争いは2年連続で、同じ役者によって、最終戦まで争われる。 [オートスポーツweb 2024年11月07日]