8割が「感染しても相手に伝えない」――梅毒急増の背景に性感染症の“誤解と軽視” #性のギモン
無症状でも感染リスクあり 軽視されがちな「予防」をどうする?
性行為をする以上、性感染症のリスクはゼロにはならない。では、どうすれば予防できるのか? NHKの調査では、避妊については約7割(66.2%)の人が気をつけている一方で、性感染症の予防を意識しているのは35.5%と3人に1人にとどまった。性行為において性感染症の予防は軽視されがちな実情がうかがえる。 そもそも性感染症は性行為によって感染するが、この「性行為」には性器の接触による性交だけでなく、口や肛門などの接触も含まれる。感染予防の基本は、性行為の最初から最後まで適切にコンドームを使用すること。途中で装着した場合は感染リスクが残る。梅毒や淋病、クラミジアなどはキスでうつる場合もあるとされていて、オーラルセックスの時にもコンドームを使用することで感染リスクを下げることができる。 性行為の相手が感染していることが分かったら、2人とも検査・治療を受けることが重要だ。無症状でも体内に菌やウイルスが存在する場合は、相手に感染させる可能性があるからだ。性感染症の多くは、感染して治っても免疫が獲得されず、何度でも感染する。自分だけが治療しても、パートナーが感染していれば再感染する「ピンポン感染」が起こってしまうのだ。
タブー視せず速やかに受診を 正しい知識を得る性教育も必要
早期検査や治療で感染拡大を防ぐためには何が必要なのか。調査で性感染症の受診ハードルについて尋ねたところ、「受診すべき症状か分からない(39.4%)」「恥ずかしい(37.1%)」「どの医療機関にかかるべきか分からない(25.6%)」という理由があげられた。また10代・20代では「金銭的な不安」が26.8%にのぼった。 今、性感染症の拡大は世界的な課題で、各国で対策強化が進んでいる。イギリスでは政府と連携したNPOが性感染症の無料検査キットを希望者に提供し、フランスでは今月から薬局で26歳未満の若者にコンドームを無料提供。日本でも特にリスクが高い若年層を中心に公衆衛生の問題として対処していく必要があると、今回の調査を共同で行った川名敬医師は指摘する。 「性感染症は恥ずかしいと思われたりタブー視されたりすることもありますが、速やかに受診してほしい医療の問題で、誰でも遭遇しうる感染症です。自分も相手も守るために健康リテラシーを身につけてもらいたいですし、感染したときにどうすればいいのかまで含めた性教育も必要です。自宅で検査できるキットやオンライン診療など、検査や受診のハードルを金銭面でも心理面でも下げる取り組みも大切ではないかと思います」