8割が「感染しても相手に伝えない」――梅毒急増の背景に性感染症の“誤解と軽視” #性のギモン
カオリさんは感染1年以内の「早期梅毒」だった。治療は抗菌薬の注射を1回打つだけで済んだが、医師からは「再発や他の人にうつす危険がなくなるまで数カ月間の経過観察が必要」だと言われた。ピルを飲むなど、避妊については自ら対処していたというカオリさん。性感染症に関する知識や認識も持っておくべきだったと考えている。 「今になって考えると、相手がどこで何をしているかは分からないので常にリスクはあるのかなと思うんですけど、以前はそういう認識自体が薄かったので、性病に対してのガードもかなり低かったなと思います。どういう症状があるのかなど最低限の知識を頭に入れておけば予防できたかもしれないです」
女性の7割は「特定のパートナー」から感染 実は身近にあるリスク
梅毒は、主に性的な接触によって広がる細菌性の感染症だ。通常、感染後3週間から6週間程度の潜伏期間を経て最初の症状が出てくるが、無症状の人もいるほか、症状がすぐに消えてしまう人もいる。薬で治療できるが、放置すると臓器などに重大な影響が出る場合もある。
2022年の梅毒感染者数はおよそ1万3000人で、現在の方法で統計をとり始めた1999年以降で過去最多となった。2012年からの10年で15倍に急増。クラミジアや淋病など他の性感染症も、近年若い世代を中心に増加傾向にあり、性感染症の拡大が懸念されている。 一方でカオリさんのように「性感染症は性生活が奔放な人がなるもの」「自分は大丈夫」と思っている人が多いのではないだろうか。しかし今回NHKが専門家と行った調査で、感染リスクは決して他人事ではないことが明らかになった。 調査は2022年12月末、全国の18歳から59歳の男女およそ1万人に対しインターネットで実施した。そのうち性行為経験がある男女4650人から回答を得て、性別や年代が日本全国の実態を反映するように補正して分析した。
調査では、18~59歳の11.2%、およそ9人に1人が何らかの性感染症の経験があった。