8割が「感染しても相手に伝えない」――梅毒急増の背景に性感染症の“誤解と軽視” #性のギモン
また、10代・20代の男女では2割ほどが過去2年以内に「性感染症になったかもしれない」と不安になった経験があり、特に若い世代が性感染症のリスクを身近に感じていることが分かった。
性感染症になった・感染の不安があったときの性行為の相手については、女性の約7割(66.7%)が「特定のパートナー」と回答した一方、男性の約7割(71.3%)は「不特定の相手」と回答した。
男性がどのように不特定の相手と出会ったのか内訳を見てみると、中高年ほど性風俗業者や店舗からの紹介が多かったのに対し、若年層になるほどアプリやSNSなどオンラインで出会う割合が高くなっていた。 今回の調査を共同で行った産婦人科医で日本大学医学部主任教授の川名敬さん(日本性感染症学会監事)は、調査結果を次のように分析する。
「人との出会い方が多様化するなか、性感染症は性風俗産業など一部の人の話ではなくなっています。特に若い世代では、近年マッチングアプリやSNSで不特定多数の人と出会うことが容易になって、感染するリスクが身近になっているのではないでしょうか。自分は大丈夫と過信せず、感染予防をしてほしいです」
「恥ずかしい」 受診控えが感染拡大の要因に
性感染症にかかるリスクが身近にあるなか、感染したかもしれないと不安になったときにどう行動すればいいのだろうか? トモヤさん(仮名・20代)は、クラブで出会った女性と一夜限りの性行為をした2~3週間後、激しい尿道の痛みを覚えた。しかし誰にも相談せず、頼ったのはインターネットだった。 「ネットで調べるとそれっぽい病気っていうか、これだっていうのがあって。(性器が)結構腫れていておしっこするときも痛かったけど、それ以外の日常生活でそんなに不便なことはなかったから、『あー、なっちゃったか』って感じでした。『どうやって治そう?』とは思ったけど、お医者さんには恥ずかしくて行きたくないなと」
クラミジアや淋病などを疑ったが、検査や受診には心理的に抵抗があったトモヤさん。インターネットで「抗生物質が効く」という情報を目にし、ちょうど扁桃炎で処方されていた抗菌薬を服用したという。 「ネットで調べた感じだと自力でなんとかなる、と思ったんですよね。不幸中の幸いっていったらあれだけど、ちょうどその薬があったから、相談しなくても解決できるなと思いました。そのときの(性行為の)相手には言ってません。名前も知らないし連絡先も知らない。本当にその日声かけてホテルに行った子だったから」