第23代文化庁長官で作曲家・都倉俊一×YouTube音楽部門グローバル責任者が見据える、日本の音楽ビジネスの未来とは
都倉 音楽家として個人的には、レコードがCDに変わっただけでも大きな喪失感がありました。ビートルズや山口百恵、ピンクレディーのジャケットを抱いて寝ていらような世代ですから(笑)。CDのように小さくなってフィジカルが物足りなくなったんですね。でも、YouTubeには新しいフィジカルがある。振り付けや演出、カメラワークなど音楽自体の次元が広がったんです。とても贅沢だと思います。 リオ レコードやCDは製造費もかかりますし、輸送費もかかりますし、お店には家賃もいる。それがいらなくなった。音楽のサブスクリプションは儲からないのか、という議論は本当に時代遅れで、次に来日した時には、なくなっていてほしいです(笑)。アーティストも大切ですが、同時にユーザーの立場も考えないといけない。広告しかり、定額制しかりで、たくさんのユーザーがやってきている。そして、大きな収益がでている。それをアーティストが受け取れる時代なんです。 都倉 CDの物理的な廃棄もないから、環境にもやさしいですしね。音楽というものをフィジカルに与えるテクノロジー。これから、まだまだ数倍、数十倍に広がるのではないでしょうか。 リオ 生成AIのような新しい技術にも、積極的に挑んでいきたいです。音楽業界はこれまで、新しい技術にディフェンシブだったところがある。でも、AIの新しい技術に関しては大胆かつ責任を守りながら動かねばと思っています。そもそもAIは、創作者の創作性をサポートするものであって、創作者に取ってかわるものではありません。その原則をしっかり理解して今、さまざまな実験も行っていますよ。 都倉 どんな化学反応が起きるのか、今後の音楽業界が、ますます楽しみです。 都倉俊一: 第23代文化庁長官、作曲家。1948年生まれ。小学校、高校時代を過ごしたドイツで音楽教育を受ける。大学在学中に作曲家デビュー。山口百恵、狩人、ピンクレディーなどの大ヒット曲を多数作曲。2021年より現職。 リオ・コーエン: Google&YouTube音楽部門グローバル責任者。1959年生まれ。ラッシュ音楽事務所、デフ・ジャム・レコードを経て、ワーナー・ミュージック・グループ音楽部門の会長兼CEOに。300 Entertainment創設を経て、2016年より現職。
TEXT=上阪徹