JFE商事審査部 インタビュー ~与信管理から取引支援に拡大、商社審査はなくならない ~
―変化と求められる役割は
以前の審査部は、貿易など海外の審査業務を担当する人は、海外の審査しかやらないという体制だった。現在は、国内も海外も両方バランスよくできるようにしている。審査方法は変わったのかというと基本的には変わっていないと思っている。日本流の国内向け与信管理をしっかり習得し、そのベースで海外与信も管理している。 組織としても、営業部門の牽制機能であるべきという基本理念は変わっていない。当然、営業部門の部長や、本部長にもきっちり審査部としての方針を伝えなければならない。ただ、相手の立場になって考え、サポートすることを重視している。 債務超過だったら単純に取引をやるべきではないという話ではなくて、どうやったら取引できるか、どこが改善できれば取引できるようになるのか、営業部門から相談してもらえるようにならないといけない。 それぞれ営業部門からの相談から知識が高まり、そのノウハウを共有、蓄積することで審査担当者が成長していく。審査部の目標は「頼りにされる審査部に」だ。相談されるには勉強しないといけない。審査部は、簿記2級とビジネス法務検定2級を必須資格としている。審査部は色々なことが求められるため、会社として補助を出し、知識を高めている。
―審査部の苦労は
海外現地取引や貿易取引リスクへの対応は強化していかなければならない。国内の与信管理の知識を高めればと言いつつ、海外では情報量が少ない、回収遅延の状態など文化や商慣習がまったく違うことを理解しながら海外現地の与信管理を構築していかなければならない。 そのため、今後も海外事業本部への審査人員の派遣を継続していきたい。審査経験が長く、これまで中核を担ってきた管理職を派遣している。だが、海外に部員を派遣するルーティンを考えると、どうやって後任を育てていくかが課題となっている。 国内の与信管理を理解し、「次は海外ね」と言ってもピンとこない。色々なことを経験したいと考えている若手も多い。審査を続けたい人もいるし、法務や財務経理といった違う部署を経験したい人もいる。今の若手はキャリアプランをしっかり持っている。それを踏まえ、いかに審査担当者としてノウハウを経験させ、育成していくかが難しい。 審査部にずっといることで審査パーソンが育つとは考えていない。取引や営業を理解できている人材も審査に来て欲しい。そういう部署とローテーションで人材育成をやっていきたい。また、会社として海外売上を増やす目標がある。当社グループは海外に61拠点あり、海外の与信先件数もどんどん増えている。貿易ではなく現地取引のリスクが高まっているので、強化していかなければならない。 現地取引の与信管理を日本人が担当するのかという問題がある。まずは日本から人材を派遣し、日系企業としての与信管理の業務を、ナショナルスタッフにも共有し、その中からリーダーを作っていきたい。 また、各国で法制度がまったく違うので、その国に即した与信管理や担保設定が必要になっている。海外の弁護士事務所の協力を得ながら、企業内弁護士のいる当社法務部などにも力を借りながら対応している。