JFE商事審査部 インタビュー ~与信管理から取引支援に拡大、商社審査はなくならない ~
―与信管理の将来は
国内企業の財務情報を基に、独自の財務判定格付システムを構築している。現在はAIを研究しながらこのシステムの高度化や海外版の財務判定格付システムの構築を進めている。完成すれば今まで財務分析に使っていた時間を、取引リスクなどをみる時間にまわしたいと思っている。 また、L/C取引や仕入取引にも予期せぬリスクが発生する。特に、三国間取引などだ。当社グループが成長するためには仕入先を増やすことが必要だが、こういった仕入先の与信管理もさらにみていくことが必要だ。 JFEグループのなかでも、しっかりと当社の審査機能を発揮していきたい。現在は、過去の決算書や定性情報をベースとして格付を導き出しているが、過去の情報が基本だ。当社が更に成長していくためには、過去の情報で与信上課題のある企業とも取引する可能性もでてくる。成長性が見いだせるから取引しようといえるような、それの裏付けとなるような評価ができるようになればと思う。 AIなどをうまく活用して予測したいが、AIが審査にとって代わるとは思っていない。最終ユーザーなど全体の商流もみながら、さまざまな取引リスクも判断し、営業と一緒に考えて取り組む必要がある。事例を積み重ねればAIでも対応可能になるかもしれないが、今後も人が行う商社の審査部がなくなることはないだろう。 生成系AIなども試しに使いながら効率化の検討も進めている。それで人を減らすわけではなく、もっと違うところに時間をかけたいと思う。 将来、審査部は重要性を増し注目度が高まっていくだろう。顧客の成長のために審査部のノウハウを提供し、成長につなげてもらう取り組みを続けている。今後は取引先の分析などコンサル機能とはまではいかないが、当社の与信管理の仕組みや格付などをグループだけでなく、社外にも協力、支援していきたい。
◇ ◇ ◇ 審査部の赤澤氏は、「取引リスクをマネジメントして、取引や販売に繋げたい。審査部として取引先で与信管理の講習会などを行い、取引先が自社の与信管理の強化に繋げたり、知識を共有することで互いにプラスとなるような関係を構築したい」と意気込む。 また、審査部に約1年在籍する坂本氏は、「財務情報から会社の状況がわかる。これは審査部に入る前はわからなかった。いちから審査を始めると相当の年数が必要というのはあながち間違いではないと思う」と、審査の重要性と難しさ、やりがいを語る。 古き良き審査部の歴史を踏襲しながら、与信管理を取引先コンサルティングに進化させ、日本流の先進的な審査を現地法人にも根付かせる。そして、過去と現在をみて将来性を予測する部分にまで審査の幅を広げている。 JFE商事審査部の弛まぬ取り組みがグループの底力を押し上げている。 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年4月1日号掲載「審査業務 最前線」を再編集)