英国が陥った袋小路、EU離脱問題の経緯を振り返る
暗礁に乗り上げた離脱プロセス
離脱プロセスが暗礁に乗り上げ、「合意なき離脱」の可能性が高まるなか、欧州理事会(EUの首脳会議)は3月22日、当初離脱の期限とされていた3月29日までに離脱協定案がイギリス議会で可決されなければ、4月12日まで期限を延長することを承認しました。しかし、メイ首相が「離脱協定案が成立すれば辞任する用意がある」とまで述べて臨んだ3月29日の議会で、離脱協定案はまたも否決され(賛成286票、反対344票)、結局EUに離脱を6月30日まで延期するよう求めざるを得なくなったのです。 これに対して、EUは4月10日に開いた首脳会議で最長で10月31日まで離脱期限を延長することを決定しました。EUとメイ首相は再交渉がないことで合意していますが、このままでは「合意なき離脱」が偶発的に発生するリスクがあり、「期限の延長」はそれを回避するための措置といえます。 ただし、これまでの経緯をみれば、たとえ期限が10月末まで延長されても、その間にイギリスで議論がまとまるかは不透明です。議論の分かれる大問題を前にイギリスの国論は四分五裂し、収まる気配がありません。これまではEUとの再交渉も国民投票のやり直しも拒絶し続けてきたイギリス政府にとって、産みの苦しみはまだ道半ばといえるでしょう。
----------------------------------- ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo!ニュース個人オーサー