「年収2万円」「40歳を過ぎてもアルバイト」…アカデミー賞を受賞した売れっ子脚本家の足立紳が「それでも諦めなかった理由」
なくてはならない妻の存在
――遅咲きながらも、結果的に脚本や映画の道で生きていけるようになった大きな理由はなんだと分析していますか? やっぱり、書き続けたことでしょうね。それに、妻の存在です。僕は自分の書くものに自信がないのですが、妻だけが面白いと言ってくれた。「百円の恋」も「喜劇愛妻物語」も多くの人に読んでもらって芳しい感想はいただけなかったですが、妻だけは「私は面白いと思うけど、もしかしたら読む能力がないのかもしれない……」と落ち込むくらい誰にも認められなかった。後にNHKでドラマ化された「佐知とマユ」や監督デビュー作となる「14の夜」もその頃に書いていたものですが、面白いと言ってくれたのは妻だけですね。 ――奥様の存在はなくてはならない。 それは本当にそうです。後、僕の仕事に関してすごく協力的で。2025年1月から、僕が監督・脚本をした「それでも俺は、妻としたい」というドラマが始まります。この作品は僕と妻の生活をモデルとした物語で、リアリティを出したくて2か月間の撮影は我が家でやったんですよ。 ――普通にお住いのご自宅ですか? そうです(笑)。普通、家族に断られますよね。この辺りも、妻や子どもたちの協力があってこそ。本当に感謝しています。燻っていた時代の「私は専業主夫と結婚した覚えはない!結果を出せ!」も、すごく重い、けれどもすごくありがたい言葉でしたから。 成功の可能性は極めて低いと思われる状況下でも、自分を信じて書き続けた日々。そして、妻との出会いが他に類を見ない足立氏の人生を展開させているのは間違いないだろう。 後編記事『「どうせ文字だし」…アカデミー賞受賞の売れっ子脚本家・足立紳が「映画の脚本家は低く見られている」と憤る理由』では、アカデミー賞を受賞してもなおアルバイトを続けなくてはいけなかった点から見る映画業界の問題点などを、引き続き足立氏に語ってもらう。 (取材・文/Mr.tsubaking)
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