「年収2万円」「40歳を過ぎてもアルバイト」…アカデミー賞を受賞した売れっ子脚本家の足立紳が「それでも諦めなかった理由」
アカデミー賞を受賞!それでも続いたアルバイト生活も、今では…
――長すぎた苦しい時代も書くことを続けた結果、「百円の恋」で2012年の周南「絆」映画祭、第一回松田優作賞に選ばれました。同作は2014年に安藤サクラさん主演で映画になり、第39回日本アカデミー賞で最優秀脚本賞を受賞しています。ある日いきなり「売れっ子脚本家」になった印象です。 いやいや、売れっ子だなんて。だって受賞した時はまだバイトをしていましたから。 ――アカデミー賞を獲った人がアルバイト生活は意外すぎます。 賞をいただいてからは、徐々に仕事をもらえるようになりましたが、受賞から2年くらいはまだバイト生活が続きました。徐々に仕事が増えて来てコンスタントに稼ぎが生まれるようになったのは、2017年くらいですね。 ――その頃は、やっぱり「ようやく売れたな」といった気持ちは生まれるものですか? それが、売れていない期間があまりに長過ぎたので、「売れている」のが一体どういう状態なのか、今でもわからないまま過ごしています。 ――でも、朝ドラに映画にと、ものすごく多忙なのではないかと想像しますが。 「ブギウギ」を書いている時は確かに忙しかったですね。2021年の秋に話が来たのですが、ブギウギの執筆にあたる翌年はすでに監督として映画を撮ることが決まっていたので(「雑魚どもよ、大志を抱け!」)、物理的に無理だと思っていました。それをNHKの方に伝えたのですが、なんとなく煙に巻かれて(笑)。結局やることになりました。で、実際に始まってみると、映画と朝ドラの同時進行で今思い出しても吐き気がするくらい忙しかったです。 ――アルバイトをしていた頃と比べるとものすごい変化ですね。それこそ「収入面」にも大きな変化があったと思います。 こういう仕事ですので、年収にすると毎年バラツキがありますが、年収2万の頃に比べると1000倍いく年もあれば30倍くらいの年もいまだにあります。 ――1000倍はすごい! でも、忙しいのが嫌いな質だから、休みに関しては仕事相手にウソをついてでもとるようにしている。ただ、今年の9月からはいろいろなことが重なり、1日も休みがとれていません。心身に本当によくないと実感しています。家族との関係も悪くなります。