2018年 米国は北朝鮮を攻撃する? “第3の道”はあるのか?
(2)トランプ大統領は攻撃を選択するのか?
しかしトランプ大統領は、こうした困難さを、最近に至るまで理解していなかったのではないかと思われます。さらに言えば、金正恩委員長がこの困難さを正しく理解しているという事実を、トランプ大統領は理解していなかったのではないかと思われるのです。その結果が、派手な“口撃”と空母派遣や爆撃機の飛行などの軍事的“パフォーマンス”です。 トランプ大統領とすれば、「米軍が攻撃を行えば、北朝鮮など簡単に叩き潰せるし、金正恩もそう理解しているだろう」と考えていたのでしょう。 しかし、結果は逆であり、金正恩委員長は核・弾道ミサイル開発を急ピッチで進めさせました。最近になって、トランプ大統領の“口撃”が止んだのは、北朝鮮攻撃をめぐる困難さについて、やっと正しい理解に至ったからではないかと思われます。 現時点では、アメリカは、石油の禁輸までちらつかせながら、経済制裁を強めることで、北朝鮮が折れることを待っています。制裁に実効性を持たせるため、中国と交渉し、今までにない強い制裁がかかっている状況です。 軍事作戦においては、戦闘の実施後に戦果確認を行い、効果を評価します。同様の見方をすれば、現在は経済制裁の効果評価を行っていると言えるでしょう。 北朝鮮から多数の小型船が日本海沿岸に漂着するなど、無理な出漁を行っていることがうかがわれ、制裁の影響は少なくないようです。しかし、これで金正恩が折れるとは思えません。 では、この先、トランプ大統領はどう出てくるのか。 経済制裁を強めるとすれば、石油禁輸を含めた強力な経済制裁となりますが、これ以上強い制裁は、かつて日本を太平洋戦争に追い詰めた時と同様に、望まぬ形での暴走を引き起こす可能性が出てきます。 武力攻撃は、前述のように非常に困難です。実際に行うのであれば、完全に奇襲的に行い、核・弾道ミサイル能力のみを破壊するか、逆に湾岸戦争のように十分な準備を行い、韓国から北進して北朝鮮を占領しなければなりません。 奇襲による核・弾道ミサイル破壊では、北朝鮮から能力を完全に除去することは難しいでしょう。結果的に、攻撃が懲罰的なものと変わらなければ、アメリカは報復におびえ続けなければなりません。こうした作戦を初期に実施し、核・弾道ミサイル能力を大きく削いだ後、弾道ミサイル防衛によって防護しつつ、各種軍事施設に空爆を継続することで、北朝鮮軍という組織の壊滅を目指すという方法は考えられますが、成功可能性が不確実な戦略です。 一方で、仮に地上戦を遂行して北朝鮮という国を地上から消し去るには、日本、韓国は言うに及ばず、北朝鮮の後ろ盾となってきた中国及びロシアの了解を取り付けなければ実施は不可能です。 政治的に、実現が可能とは考えられません。