2018年 米国は北朝鮮を攻撃する? “第3の道”はあるのか?
(3)中国を絡めた“第3の道”がある?
各国の関係が大きく変わらなければ、上記のようなパターン、つまり、奇襲攻撃で核・ミサイル能力を破壊すること、さらに地上戦によって北朝鮮を消滅させることは難しいとしか考えられないと思われます。しかしトランプ大統領は、エルサレムの「首都承認」を行ったように、従来の政治構造を大きく変えるような大胆な決定を行う可能性も考えられます。 トランプ大統領は、選挙期間中から「アメリカ・ファースト」だと言ってきました。アメリカ・ファーストは、もともと内政を重視した孤立政策を意味しますが、トランプ大統領は、外交面においても、アメリカの国益を重視する言葉として使っています。 しかし日本は別として、これまでもアメリカ大統領は常に国益を重視した外交政策を行ってきました。 トランプ大統領の言うアメリカ・ファーストは、悪い言い方をすれば、アメリカさえ良ければ、他はどうでもよいという考え方です。 そのため、為替操作を行っているとして中国を非難することはあっても、ダライ・ラマとの会談は避けているよう見えるなど、チベット問題で中国を非難することはありません。アメリカ人以外は、いかに苦しもうが、どうでもよいという訳です。 トランプ大統領が北朝鮮を非難するのは、金正恩委員長が酷い独裁者だからではなく、アメリカに脅威を及ぼすことだけが理由です。11月12日には、「金正恩の友人になる努力をする」とまで発言しています。北朝鮮が、核・弾道ミサイルの能力を放棄すれば、融和の道があるとのメッセージを送っているのです。トランプ大統領とすれば、目標とするアメリカの安全確保ができるのなら、困難な軍事作戦を行いたくないというのが本音のはずです。
従来の政治構造を大きく変えても、アメリカの安全さえ保つことができるのであれば、取り得る“第3の道”は、可能性として存在します。 奇襲的な攻撃によって核・弾道ミサイル能力を削ぐことで、当面の危険を回避し、同時あるいは若干遅れて「金王朝」を転覆させれば、将来の危難も防ぐ事ができます。しかし、かつてアメリカが中南米で頻繁に行っていたような政府転覆させた後の受け皿となるような組織育成は、北朝鮮に対しては、行えていません。アメリカは、自身では北朝鮮の政府転覆を行うことができないということです。 しかし中国であれば、可能でしょう。 北朝鮮が使用する兵器の多くは中国製です。北朝鮮軍には、中国とパイプを持つ高官が多く存在します。アメリカによる攻撃で混乱する最中であれば、金正恩委員長を快く思わない北朝鮮軍人を糾合することも可能なはずです。中国軍が、呼応して動く事も考えられます。 ただ、これは中国にとっても、非常に労力を要する政変です。相当の見返りがなければ、トランプ大統領が持ちかけたとしても、乗っては来ないでしょう。その見返りとして十分と言えるものは、北朝鮮そのもの、さらに言うなら、韓国まで含めた朝鮮半島です。 中国に北朝鮮でのクーデターを行わせるとしたら、その後の北朝鮮は、形式上で独立を保ったとしても、実質的には中国の一部となります。いずれは、中国の一部である延辺(えんぺん)朝鮮族自治州や長白(ちょうはく)朝鮮族自治県と同様の地位になって行くでしょう。 そして、もしそのような事態になれば、恐らく韓国は自主的にそれら自治州と統一をし、中国の一部となる道を選択するように思えます。 中国は、アメリカと覇権を争う意思はありますが、核戦争を行う意思はありません。トランプ大統領としては、朝鮮半島を中国に渡すことで、アメリカの安全が保てるのなら、それで良いと考える可能性はあり得ます。