湘南ベルマーレをJ1に昇格させた「選手再生工場」
湘南ベルマーレが1年でのJ1復帰を決めた。J1へ自動昇格できる2位以内を28日に確定させていたベルマーレは、ホームにファジアーノ岡山を迎えた29日のJ2第39節を1‐1で引き分け、3試合を残してJ2優勝も達成して喜びに花を添えた。 2009、2012、2014シーズンに続く4度目のJ1昇格は、北海道コンサドーレ札幌と並ぶリーグ最多タイ。指揮を執って6年目になる曹貴裁(チョウ・キジェ)監督は、同一チームをJ1へ3度導いた初めての監督となった。 もっとも、昇格する回数が多いことは、J2への降格が多いことも意味する。ベルマーレ平塚時代から4度を数える降格も、コンサドーレと並ぶワーストタイ。いわゆる「エレベータークラブ」を強いられてきた歴史は、相次いだ主力の移籍と密接にリンクしている。 たとえばJ1で8位に躍進し、残留を果たした2015シーズンのオフには、キャプテンのMF永木亮太(鹿島アントラーズ)、ハリルジャパンにも選出されたDF遠藤航(浦和レッズ)ら4人が移籍。昨シーズンは年間17位で無念の降格となった。 このオフも「10番」の菊池大介(レッズ)、2014年シーズンの1年目から最終ラインの一角を担ったDF三竿雄斗(アントラーズ)らが移籍。独走でJ2を制した2014シーズンを経験した選手は、わずか5人という状況で開幕を迎えた。 曹監督をして「ゼロからのスタート」と言わしめた苦境で屋台骨を支えたのが、期限付き移籍で加入しているMF山田直輝、MF岡本拓也、MF秋野央樹の3人だった。 元日本代表の肩書をもつ27歳の山田は、所属先のレッズから復帰を要請されながら、2度にわたって期限付き移籍の期間を延長。今シーズンは初体験となるJ2で戦ってきた。 「自分がいる年にJ2へ降格させてしまったので。絶対に1年でJ1へ戻したいと思ったのと、もうひとつは湘南でもっと成長したいという気持ちが強かったので」 今シーズンは36試合に出場。プレー時間は2760分間を数え、自己最多だった2009シーズンにマークした20試合、1365分間を大きく更新した。ダブルシャドーの一角を主戦場としながら、サッカーに向き合う姿勢に変化が生まれたという。 「これだけ試合に出させてもらって、チームが勝利するための責任とは、こんなにも重たいものだったのかと感じている。たとえば走る距離はそんなに変わらないけど、以前は自分勝手に走っていたのが、いまではチームのために走れるようになった」 山田と同じくレッズから加入している25歳の岡本も、2016年シーズンのオフに志願して期限付き移籍を延長した。J1で自己最多となる21試合に出場して得た昨シーズンの手応えを、曹監督が掲げる「湘南スタイル」のもとで確固たるものに変えるための決断だった。 登録はDFだが、今シーズンは一列上げた右アウトサイドで新たな可能性を追い求めた。1対1の強さに加えて、ボールを前へ運ぶ力も身につけたいまでは「充実感があります。プロになってから一番嬉しいシーズンですね」と笑う。