「悪いのはユニクロでなく悪徳西側メディア」と結論づけた中国の思惑
ユニクロ問題に終止符を打ちたい中国
本当は中国が、日本と欧米を離反させたいのかもしれないし、ユニクロに「貸し」を作りたいのかもしれない。だが、ともかく『人民日報』の評論によって、中国が今回の問題に終止符を打とうとしていることが読み取れる。中国国内では、ネットやSNS上の「ユニクロ批判」を封じ込めていくだろう。 これまでの習近平政権の「戦狼(せんろう)外交」(狼のように戦う外交)にならえば、ヒステリックなまでのユニクロ攻撃、日本攻撃が起こってもおかしくなかった。それが今回は、(中国が言うところの)「大国外交」を演じた。 この「変化」は、習近平政権の「成熟ぶり」を示すものなのか。それとも中国に対して超強硬なトランプ政権発足前の「様子見」なのか? もしも万が一、ユニクロを叩く余力もないほど中国経済が憔悴(しょうすい)しているのだとすれば、それはそれで大問題だが。 <今週の新刊図書> 世界を揺るがす! グローバルサウスvs米欧の地政学 石田和靖、宇山卓栄著 ビジネス社 1980円(税込) 『越境3.0チャンネル』の人気ユーチューバーと、人気代ゼミ世界史講師による異色の対談。テーマは「グローバルサウスvs米欧」で、既存の常識を覆す異論・極論が満載で、読みごたえがあった。ドバイの公務員は、20代前半で月給が120万円(!)なんですと。今月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)やG20(主要国・地域)、COP29(国連気候変動会議)を見ていても、世界は米欧だけでないことは一目瞭然だ。 私は両筆者とも面識がないが、その「職業」に興味を持って読み始めた。昨今の日本の選挙で明らかなように、ユーチューブの影響力は既存メディア以上だし、「ぬるま湯」の大学教授より「日々ガチンコ勝負」の予備校講師の方が、世界と真剣に向き合っている。このテーマとこの著者で一冊にまとめた出版社の胆力にも敬意を表したい。
近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)